マルティーナ・フランカ

マルティーナ・フランカ (Martina Franca)

イタリア共和国プッリャ州のターラント県北部に位置するマルティーナ・フランカは、ヴァッレ・ディトリアと呼ばれる美しい谷間に広がるコムーネ（基礎自治体）です。県都ターラントに次ぐ約4万9000人の人口を抱え、この地方において重要な役割を担う中心地の一つとなっています。特に、往時の面影を残すバロック様式の歴史的な町並みと、国際的なオペラ音楽祭の開催地として広くその名が知られています。

地理的な特徴

このコムーネは、イタリア国内でも有数の広大な面積、約295平方キロメートルを有しています。プッリャ州内の主要都市からの距離としては、県都ターラントから北北東へ約26km、ブリンディジから西へ約51km、そして州都バーリからは南東へ約60kmに位置しており、交通や交流において重要な立地です。周辺には、ヴァッレ・ディトリア地方特有のトゥルッリ（円錐形の屋根を持つ家屋）が見られる景観が広がっており、隣接するコムーネにはロコロトンド、チステルニーノ、オストゥーニ、アルベロベッロなど、個性豊かな町が点在しています。

魅力あふれる旧市街

マルティーナ・フランカ最大の魅力は、堅固な市壁に囲まれた歴史的な旧市街です。街への入り口となる市門は、壮麗なバロック様式で装飾され、訪問者を古い町並みへと誘います。旧市街の内部は、迷路のように複雑に入り組んだ狭く曲がりくねった小道が続き、歩くたびに新たな発見があります。道の間に突然現れる広場は、かつての生活の中心であり、今も市民の憩いの場となっています。旧市街の中心部には、17世紀後半に建設が開始された壮大なドゥカーレ宮殿があります。この宮殿に面して広がるピアッツァ・ディ・ローマは、旧市街で最も大きな広場であり、一部は緑豊かな庭園となっていて、美しい景観を作り出しています。

歴史の一断面

マルティーナ・フランカの歴史には、多様なコミュニティが共存した時代がありました。中世には、比較的多くのユダヤ人がこの街に居住しており、15世紀末には人口の約3分の1を占めていたという記録が残っています。しかしながら、1495年にはユダヤ人の街への立ち入りや居住が禁じられるといった出来事があり、これに伴い悲劇的な迫害や虐殺事件も発生しました。このような過去は、街の歴史における複雑で困難な側面を示しています。

文化、イベント、産業の営み

この街の文化的なハイライトは、毎年夏に開催されるオペラ音楽祭、フェスティヴァル・デッラ・ヴァッレ・ディトリアです。1975年に始まったこの祭典は、「ヴァッレ・ディトリア音楽祭」または「マルティーナ・フランカ音楽祭」とも呼ばれ、クラシック音楽、特にオペラの上演を通じて国際的な注目を集めています。ドゥカーレ宮殿の中庭などを舞台に、質の高い公演が繰り広げられ、世界中からオペラ愛好家が訪れます。また、マルティーナ・フランカは、プッリャ州を代表するDOC（原産地統制名称）ワインの一つである「マルティーナ・フランカ」の主要な生産地でもあります。このワイン醸造は、地域の重要な産業の一つとして経済を支えています。

交通アクセス

交通網においては、地方鉄道であるスド・エスト鉄道の重要な結節点としての役割を果たしています。マルティーナ・フランカ駅は複数の路線が分岐する駅であり、これにより州都バーリ、県都ターラント、そしてプッリャ州南部の中心都市であるレッチェといった主要な都市と鉄道で直接結ばれており、州内の移動において利便性の高い拠点となっています。

この街が育んだ人々

マルティーナ・フランカは、長い歴史の中で様々な分野で活躍する多くの才能を輩出してきました。18世紀から19世紀初頭にかけて高名なカストラート歌手であり音楽教育者としても知られたジュゼッペ・アプリーレや、20世紀を代表するヴァイオリニストの一人であるジョコンダ・デ・ヴィートなどがこの街の出身です。現代においても、作曲家のコジモ・ダミアーノ・ランツァ、小説家・脚本家のドナート・カッリージ、シンガーソングライターのレンツォ・ルビーノなど、多様な分野で名を馳せる人々がマルティーナ・フランカにゆかりを持っています。また、スポーツ分野では、プロサッカークラブであるASマルティーナ・フランカ1947がこの街を本拠地として活動しています。

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