マルト長谷川工作所

株式会社マルト長谷川工作所は、新潟県三条市に本社を構える、手動工具の専門メーカーです。KEIBAブランドで広く知られ、ニッパー、ペンチ、プライヤーといった切断工具を中心に製造しています。創業以来、その高い品質と技術力で、国内外の多くの有名メーカーにOEM供給を行い、海外からも研究対象とされるほど、その品質は高く評価されています。

創業は1924年。創業者である長谷川藤三郎が、東大阪でペンチに出会ったことがきっかけでした。当時、国内市場は関西の工具メーカーが先行しており、海外に活路を見出します。現在でも、製品の50%以上が輸出されており、タミヤブランドのプラモデル用ニッパーをはじめ、国内外の有名ブランドのプライヤーのOEMを手掛けています。素材の選定から、加工、仕上げ、梱包までを自社工場で一貫して行う生産体制も、高品質を支える要素の一つです。

生産設備にも独自の工夫が凝らされています。通常は半日を要する鍛造金型の交換を、カートリッジ方式の導入により6分40秒で完了させることを実現しました。また、鍛造ハンマーの操作から、焼く・打つ・抜くという3つの工程を一人で行い、機械加工においても、ニッパーの12工程を一人で完結させることが可能です。刃物の熱処理は、工程ごとに何度も繰り返し行われ、最終的な刃先の仕上げは、全数手作業で行われています。これらの高度な技術により、高品質なカッターが製造され、近年ではプロ用の高価格帯ネイルカッター市場にも進出しています。

KEIBAブランドは、デザインにも早くから取り組んでいることでも知られています。1945年頃には、すでに工業デザインを取り入れており、東京美術学校図案科（現：東京芸術大学）の小杉二郎氏（マツダ・R360クーペのデザインで知られる）とは、1982年にグッドデザイン賞を受賞した「ワイヤーストリッパー」や、1982年グッドデザイン賞及び1996年ロングライフデザイン賞を受賞した「スナップリングプライヤ」を共同開発しています。また、デザイナーの羽生道雄氏とは、1986年にグッドデザイン賞を受賞した「パワーアップニッパ」、1988年に「パワーアップペンチ」を共同開発しました。自社デザインによる商品も多く、「ニューセラミックチップ付ピンセット」で1986年グッドデザイン中小企業商品賞を、「光ファイバーケーブルカッター」で1994年に中小企業庁長官特別賞を受賞しています。その他、「エルゴニッパープラスチック用」や「ハイレベレージペンチ ケイバアルファ」なども自社デザインによるものです。

KEIBAのデザインコンセプトは、『工具本来の機能を最優先した機能美』です。デザインへのこだわりは、製品だけでなく、カタログ、パッケージ、ポスターなど、あらゆる箇所に見て取ることができます。

沿革としては、1924年5月に初代長谷川藤三郎が個人経営で締ハタや小農具、大工道具の製造を開始したのが始まりです。1936年5月には新潟県三条市島田に移転し、大工道具に加え、ペンチ、スパナ、レンチなどの作業工具の生産を開始しました。1943年5月には株式会社マルト長谷川工作所へと改組し、軍需用品の製造にも携わりました。1951年10月には、日本工業規格表示制度の実施と同時にペンチ類の表示許可を取得し、1970年8月には強力ニッパーのJIS表示許可を取得しています。

1980年10月には、「同軸ケーブル用ワイヤーストリッパー」が中小企業庁長官賞を受賞、1995年4月には長谷川直が3代目代表取締役社長に、2011年5月には長谷川直哉が4代目代表取締役社長に就任しています。2003年8月には、理容・美容業界用工具への進出も開始し、幅広い分野で製品を展開しています。

主な商品としては、ペンチ、ラジオペンチ、ニッパー、爪切り、理・美容はさみ、ピンセット、締めハタなどがあります。これらの製品は、長年の技術と経験により培われた高品質な製品として、多くのプロフェッショナルから信頼を得ています。

参考文献として、『上質工具入門』、『工具の本』、『TOOLS NOW 道具大全』、『タミヤ公式ガイドブック ミニ四駆超速カスタム入門 TMFL Ver.』などが挙げられます。また、関連項目として、工具メーカーの一覧、工具、タミヤ（ニッパー供給先）などがあります。

詳細は、公式ウェブサイトやGOOD DESIGN AWARDのウェブサイトで確認することができます。

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