マルバニッケイ

マルバニッケイ（丸葉肉桂）について

マルバニッケイ（学名：Cinnamomum daphnoides）は、クスノキ科ニッケイ属に分類される常緑性の亜高木です。別名としてコウチニッケイとも呼ばれています。この植物は、日本固有種であり、特定の地域にのみ分布している希少な種です。

分布と生育環境

マルバニッケイは、主に九州地方（福岡県、長崎県、鹿児島県）と南西諸島（種子島から硫黄鳥島にかけて）に分布しています。特に、海岸林や山頂部など、風の強い場所に生育することが多く、種子島からトカラ列島にかけては、海岸沿いに独特の低木林を形成しています。また、観賞用として庭木などにも利用されており、自生地以外でも見られることがあります。

形態の特徴

マルバニッケイは、樹高が10mに達する常緑亜高木です。幹は多数の枝を分枝させ、若枝は四角形で絹毛が密生しています。葉は対生または互生で、倒卵形をしており、長さは3～4cm程度です。葉の先端は丸く、革のような質感で、三行脈が特徴的です。葉の裏面には絹毛が密生しています。花期は5月から6月で、花序には長い柄があり、絹毛が密生しています。果実は楕円形の液果で、長さは約9mm、熟すと黒紫色になります。ニッケイ属の特徴として、樹皮と葉には芳香があります。

近縁種との比較

マルバニッケイは、同じニッケイ属のヤブニッケイなどと比較して、葉が非常に小さいことが特徴です。また、琉球列島に分布するシバニッケイも葉が小さいですが、マルバニッケイに比べて葉の裏の毛が少ないという違いがあります。さらに、奄美大島や慶良間諸島には、マルバニッケイとシバニッケイの中間的な特徴を持つケシバニッケイも分布しています。

保護状況

マルバニッケイは、環境省のレッドリストで準絶滅危惧（NT）に指定されており、絶滅の危機に瀕していると評価されています。また、各自治体のレッドデータブックにも掲載されており、地域によってはより深刻な状況にあることが示されています。

• - 福岡県：絶滅危惧II類
• - 長崎県：絶滅危惧IB類
• - 鹿児島県：準絶滅危惧
• - 沖縄県：準絶滅危惧

これらの評価は、マルバニッケイの生育環境の悪化や個体数の減少が深刻であることを示唆しており、保護に向けた取り組みが重要となっています。

参考文献

• - 沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物（菌類編・植物編）-レッドデータおきなわ-』、2006年。
• - 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年。
• - 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧』 九州大学出版会、1997年。
• - 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第7巻 シダ植物～まめ科』 新星図書出版、1989年。

外部リンク

• - GKZ植物辞典 - マルバニッケイの写真
• - 牧野標本館所蔵シーボルトコレクション - マルバニッケイの標本

マルバニッケイは、その独特な生態と美しい姿から、植物愛好家からも注目される存在です。しかし、その一方で、生育地の開発や環境の変化によって、その存在が脅かされているという現状を理解し、保護活動の重要性を認識する必要があります。

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