マルメディ虐殺事件

マルメディ虐殺事件とは

マルメディ虐殺事件は、第二次世界大戦中の1944年12月17日、バルジの戦いにおいて、ドイツ国防軍の武装親衛隊によって発生した戦争犯罪です。この事件では、アメリカ軍の捕虜84名が、ベルギーのマルメディ近郊で殺害されました。

事件の経緯

1944年12月16日、ドイツ軍は「ラインの守り」作戦を発動し、連合軍に対して大規模な攻勢を開始しました。この作戦は、連合国側からは「バルジの戦い」として知られています。

その翌日、アメリカ陸軍第285野戦砲兵観測大隊B中隊は、マルメディ近郊への移動を命じられました。中隊は移動中、マルメディの街を通過する際に、ドイツ軍部隊との遭遇について警告を受けましたが、先行していた車両との合流を優先し、行軍を継続しました。

一方、ドイツ軍の先鋒であるヨアヒム・パイパー親衛隊中佐率いるパイパー戦闘団は、同じくマルメディ近郊を移動していました。戦闘団は当初、別の経路を予定していましたが、車両の移動効率を上げるために東側の道路へ出てきました。

12時45分頃、アメリカ軍の先導車がファイブ・ポインツと呼ばれる交差点を通過した際、ドイツ軍の戦車による砲撃を受け、戦闘が始まりました。

投降と虐殺

短時間の戦闘の後、B中隊は降伏を決めました。降伏したアメリカ兵たちは、ファイブ・ポインツの南側の畑に集められました。

しかし、その直後、ドイツ軍は機関銃やライフルで捕虜たちへの銃撃を開始しました。目撃者の証言によると、銃撃の前にピストルの銃声が2度聞こえたとされています。また、銃撃後も、ドイツ兵は畑に入り、生存者を射殺したり、遺体を蹴ったりして、生死を確認していたとされています。

この虐殺により、80人近くのアメリカ兵が命を落としました。

虐殺の様相

事件の詳細は、生存者の証言や戦後の調査によって明らかになってきましたが、不明な点も多く残されています。当時、メディアは事件を大々的に報道しましたが、一部の生存者は誇張した証言を行い、混乱を招きました。

アメリカ側では、アドルフ・ヒトラーがアメリカ兵を捕虜にしないよう命じていたことが虐殺の原因であるという説も唱えられました。しかし、戦後の裁判では、そのような命令書は発見されませんでした。

一方、ドイツ側には、アメリカ兵が戦闘部隊であると誤認して銃撃したという主張をする者もいます。しかし、生存者の証言や遺体の状況から、虐殺が行われたことは明らかです。

虐殺の原因

この虐殺は、計画的なものではなく、偶発的なものであった可能性が高いと考えられています。ドイツ軍は、捕虜の取り扱いについて明確な指示を受けておらず、現場の指揮官や兵士の判断で虐殺に至った可能性も指摘されています。

また、アメリカ兵が脱走を試みたことが、銃撃の引き金になったという説もあります。

事件の調査と遺体の回収

事件後、アメリカ軍は監察班を派遣して調査を開始しました。また、遺骨収集部隊が現場で遺体の回収を行いました。

回収された遺体は、身元確認と捜査のために解剖されました。遺体からは、銃撃による傷だけでなく、撲殺された痕跡も発見されました。

戦後

戦後、アメリカ軍は、マルメディ虐殺事件に関与したとして、ライプシュタンダーテ師団の元隊員ら73人を起訴しました。

裁判はダッハウ強制収容所で行われ、被告人らは有罪判決を受けました。しかし、裁判の不公平さを批判する声も上がり、その後、減刑や釈放が行われました。

特に、事件に関与したパイパーは死刑判決を受けましたが、後に終身刑へと減刑され、その後釈放されています。釈放後、パイパーはフランスで隠遁生活を送っていましたが、1976年に正体が発覚し、自宅に火炎瓶を投げ込まれて死亡しました。

マルメディ虐殺事件を扱った作品

この事件は、映画やドキュメンタリーなど、様々な作品で取り上げられています。

映画 『極寒激戦地アルデンヌ 〜西部戦線1944〜』
映画 『バルジ大作戦』

結び

マルメディ虐殺事件は、戦争の悲惨さを象徴する事件の一つです。この事件を教訓として、二度とこのような悲劇が起こらないように、私たちは歴史から学び続ける必要があります。

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