ヨアヒム・パイパー

ヨアヒム・パイパーの生涯

ヨアヒム・パイパー（Joachim Peiper）は、1915年1月30日にベルリンで生まれ、1976年7月14日にその生涯を閉じました。彼はナチス・ドイツの武装親衛隊（SS）の隊員であり、最終階級はSS大佐でした。その勇猛さとカリスマ性から「ヨッヘン（Jochen）」の愛称で呼ばれ、第二次世界大戦中には数々の激戦地で活躍しました。

生い立ちと軍歴

パイパーは、軍人の家庭に三人兄弟の三男として生まれました。父ヴォルデマールは陸軍士官で、その影響からパイパーも幼い頃から軍隊に憧れを抱いていました。1934年、19歳で親衛隊特務部隊に志願し、入隊後、SS士官学校で教育を受けました。卒業後はSS少尉に任官され、SSの理想とする模範的なアーリア人種であったことから、1938年には親衛隊長官ハインリヒ・ヒムラーの副官を務めました。

第二次世界大戦での活躍

第二次世界大戦が勃発すると、パイパーはライプシュタンダーテ SS アドルフ・ヒトラー(LSSAH)連隊に所属し、ポーランド侵攻作戦に参加しました。その後も西方電撃戦、バルカン戦線、ソ連戦線と各地を転戦し、その武勇を認められて数々の勲章を受章しました。1943年には親衛隊少佐に昇進し、第2SS装甲擲弾兵連隊第3大隊長に任じられ、第三次ハリコフ攻防戦では騎士鉄十字章を受章しました。

イタリア戦線

1943年7月、ムッソリーニ政権が崩壊したイタリアへ派遣され、イタリア軍の武装解除と平定に当たりました。この際、あるユダヤ人を助けた逸話が残っており、そのユダヤ人は戦後、パイパーの裁判で弁護人として証言しました。しかし、同年9月には部下がイタリア兵に連行された事件をきっかけに、ボーヴェス村での砲撃事件が発生。この事件で民間人33名が死亡し、戦後の裁判でパイパーが死刑宣告を受ける要因の一つとなりました。

その後の戦歴

1943年12月にはSS第1戦車連隊長に就任（ドイツ軍最年少の連隊長）。1944年1月には柏葉付騎士鉄十字章を受章、同時に親衛隊中佐に昇進しました。ノルマンディー上陸作戦後には、カーン戦区でイギリス軍と激戦を繰り広げ、グッドウッド作戦では巧みな防衛戦で連合軍を撃退しました。ファレーズ・ポケットでの包囲から脱出した後、部隊を再編成し、同年12月にはアルデンヌ攻勢に参加しました。パイパー戦闘団を率いてアントウェルペン攻略を目指しましたが、米軍の抵抗や燃料不足、友軍との連携不足により撤退を余儀なくされました。アルデンヌ攻勢中には、パイパー指揮下の部隊が捕虜のアメリカ兵を多数殺害したマルメディ虐殺事件が発生し、これも戦後の裁判で死刑宣告を受ける要因の一つとなりました。

1945年に入ると、パイパーは東部戦線に送られ、ソ連軍と戦いました。終戦時には、師団ごとアメリカ軍に降伏し、武装解除を受けました。

戦後と最期

第二次世界大戦後、パイパーはマルメディ虐殺事件への関与を疑われ、他の武装親衛隊員と共に裁判にかけられました。裁判では絞首刑による死刑が宣告されましたが、銃殺を希望し、それが認められました。しかし、その後、死刑は減刑され、懲役刑に服しました。1956年12月31日に仮釈放されました。

釈放後、パイパーはポルシェやフォルクスワーゲンに勤務しましたが、「非ナチ化」による糾弾を受け、短期間で退職を余儀なくされました。その後、フランスの国家主義者の支援を受け、偽名でフランスに隠遁し、翻訳家として生活しました。1976年、フランス共産党活動家の店で小切手を使用したことがきっかけで身元が露見し、近隣に糾弾するチラシが配布され、殺害予告がなされました。フランス政府から出国を命じられ、その前日の1976年7月13日夜、自宅に火炎瓶が投げ込まれ、焼死しました。家族は事前にドイツへ避難していたため無事でした。犯人は特定されませんでしたが、フランス共産党活動家の犯行が疑われています。遺体はバイエルンの墓地に埋葬されました。

人物像

パイパーは金髪碧眼で長身の体躯を持ち、容貌の良さから、理想的な北方ゲルマン人の親衛隊隊員像としてイメージされていました。そのカリスマ性と軍事的な才能は、多くの人々を魅了しましたが、同時に戦争犯罪に関与した人物としても知られています。

彼の生涯は、第二次世界大戦という時代が生み出した悲劇と、その後の複雑な遺産を象徴しています。

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