マレーシアと北朝鮮の関係

マレーシア・北朝鮮関係の概要

マレーシアと北朝鮮の外交関係は、1973年6月30日に樹立されました。当初、両国間には友好的な関係が見られ、2003年にはクアラルンプールに北朝鮮大使館が開設されました。2009年には、マレーシアは北朝鮮へのビザなし渡航が可能な最初の国となり、両国間の交流は活発化しました。しかし、2016年の国際連合安全保障理事会決議による北朝鮮制裁強化を受け、ビザ免除措置が縮小される中で、マレーシアは北朝鮮にとって唯一のビザ免除国となりました。

歴史的経緯

2013年、北朝鮮の最高指導者である金正恩は、マレーシアのHELP大学から経済学名誉博士号を授与され、両国関係の良好さを象徴する出来事がありました。しかし、2017年2月、金正恩の異母兄である金正男がクアラルンプール国際空港でVXガスによって暗殺される事件が発生し、両国関係は急速に悪化しました。

マレーシア政府は、北朝鮮側の対応に不満を表明し、ビザ免除制度を停止しました。さらに、在マレーシア北朝鮮大使の姜哲をペルソナ・ノン・グラータ（好ましからざる人物）として国外追放処分としました。これに対し、北朝鮮外務省は、在北朝鮮マレーシア大使のモハマド・ニザン・モハマドを同様にペルソナ・ノン・グラータに認定し、報復措置を取りました。同年10月には、マレーシアが平壌の大使館を閉鎖する意向を示しました。

クアラルンプールの北朝鮮大使館は、マレーシアが平壌から大使館を引き揚げた後も存続していましたが、2021年3月19日、マレーシア当局が資金洗浄の罪で逮捕していた北朝鮮人をアメリカに引き渡したことに北朝鮮が反発し、外交関係を断絶しました。その結果、3月21日にはクアラルンプールの北朝鮮大使館も閉鎖されました。

経済関係

経済面では、北朝鮮はマレーシアから精製油、天然ゴム、パーム油などを輸入していました。2010年代半ばには、両国は情報通信分野での協力強化を模索していました。一方、北朝鮮からは、マレーシアのサバ州とサラワク州で鉱業に従事する労働者が派遣されていました。

観光関係

観光面では、2017年まで北朝鮮はマレーシアの観光部門と協力し、観光客誘致に力を入れていました。2001年以降、1,000人以上のマレーシア人が北朝鮮を訪れています。2011年には、高麗航空がクアラルンプール・平壌便を開設し、観光客増加を後押ししようとしましたが、利用者が少なかったため一度閉鎖されました。その後、2013年8月に再開されました。

クアラルンプールには、北朝鮮政府直営のレストランが存在しましたが、金正男暗殺事件により両国関係が急速に悪化し、マレーシア政府は2017年9月28日、自国民の北朝鮮渡航を禁止しました。

工作拠点

在マレーシア北朝鮮大使館は、過去に北朝鮮の工作活動の拠点として利用されていました。ラングーン事件では司令部の役割を果たし、その後も2017年の金正男暗殺事件では、大使館の二等書記官が指揮をとっていたとされています。

また、クアラルンプールでは、北朝鮮の工作機関である朝鮮人民軍偵察総局が運営するフロント企業が、国際連合安全保障理事会決議を逃れて軍事用無線機器を輸出していたことが確認されています。

外交使節

在朝鮮民主主義人民共和国マレーシア大使

モハマド・ユソフ・モハマド・ザイン（2004～2006年）
ラヒミ・ハルン（2008～2011年）
モハマド・ニザン・モハマド（2015～2017年）

在マレーシア朝鮮民主主義人民共和国大使

姜哲（2014～2017年）
キム・ユソン（臨時代理大使、2017～2021年）

参考文献

(省略)

関連項目

ピョンヤン (レストラン・チェーン)
* 北朝鮮によるマレーシア人拉致

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