マローダー (装輪装甲車)

マローダー (装輪装甲車)

マローダーは、南アフリカ共和国のパラマウント・グループが製造する、対地雷防護能力に特化した装輪装甲車です。2007年にアブダビで開催された国際軍事見本市IDEXで、ヨルダンとパラマウントのジョイントベンチャーとして発表されました。

設計・構造

マローダーは、偵察および平和維持活動での使用を想定して開発されました。乗員は2名で、他に8名が搭乗できます。パラマウント・グループが同時期に開発したマタドールよりも小型な車両となっています。

全輪駆動の4輪または6輪の設計があり、多様な派生型が提案されています。例えば、4輪の装甲兵員輸送車、救急車、火力支援車（対戦車・対人）、指揮車、そして6輪の120mm自走迫撃砲や弾薬輸送車などです。ターボチャージャー付きディーゼルエンジンを搭載し、航続距離は約700km、最高速度は100km/hに達します。

車体は二重化されたモノコック構造を採用しており、STANAG 4569レベル3に相当する防弾・耐地雷性能を備えています。これは、小銃弾や地雷の爆発から乗員を保護する能力を意味します。

オプションとして、追加装甲、各種通信機器、7.62mmから14.5mm機関銃に対応するウェポンステーション、寒冷地対策装備などが用意されています。積載重量は4,000kg、自重を含めた最大戦闘重量は17,000kgです。

その堅牢性は、イギリスBBCの自動車番組「トップ・ギア」でも実証されました。リチャード・ハモンドの運転で、車体下部での爆破実験を含む試乗が行われ、番組内で「世界で最も止められない車両」と評価されました。この評価は、パラマウント・グループ自身もマローダーの紹介文に使用しています。

一般には「一般人が買える装甲車」として紹介されることもありますが、パラマウント社は政府機関以外には販売しない方針を明確にしています。

生産

2008年、アブドゥッラー2世国王設計開発局とパラマウント・グループは、生産・製造に関して合意しました。ヨルダンが最初の採用国となり、マタドールと合わせて50両を導入しました。2011年には、アゼルバイジャンでも生産の合意が成立しています。さらに2012年には、シンガポールとの間で製造・販売の合意がなされ、ベルレックス（Belrex）という名称でSTエンジニアリングとシンガポール国防科学技術庁によって製造されています。

採用国

アルジェリア: 2009年に2両を導入（ストックホルム国際平和研究所調べ）。
アゼルバイジャン: 2009年から2014年にかけて75両を調達。現地生産の合意も成立しています。
コンゴ共和国: 2010年から2012年にかけて52両を調達。
ヨルダン: 2008年に最初の採用国となり、現地生産されています。
カザフスタン: 寒冷地仕様をアルラン（オオカミの意）の名称で採用。2016年から軍と治安機関に導入を開始し、現地生産も行っています。2023年時点で、カザフスタン陸軍が138両のアルランを保有。
マラウイ: 2013年に6両を調達。
オマーン: 2013年に1両を調達。
シンガポール: 2013年に12両を調達。ベルレックスの名称で運用されており、2023年時点でシンガポール陸軍が74両を保有。

関連項目

マタドール (装輪装甲車): マローダーと同系列の大型車両。

外部リンク

パラマウント・グループ公式サイト
パラマウント・グループ公式YouTubeチャンネル
トップ・ギア公式YouTubeチャンネル

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