マンクス2 7100便着陸失敗事故

2011年2月10日、マンクス2が運航する近距離定期便7100便（フェアチャイルド・スウェアリンジェンメトロライナー）が、アイルランドのコーク空港への着陸に失敗し、乗員乗客12名のうち6名が死亡、4名が重傷を負うという痛ましい事故が発生しました。

事故の概要

事故当日、7100便は北アイルランドのベルファストからコークへ向かう定期便として運航していました。現地時間午前9時50分頃、コーク空港の滑走路17への着陸進入中に機体が右に大きく傾き、滑走路に接触、裏返しになって大破しました。

事故発生時、7100便は濃霧のため、直前に2度の着陸復行を行っていました。3度目の着陸進入では、副操縦士が主な操縦を担当していましたが、エンジンの推力調整は機長が行っていたという状況でした。本来、操縦は1人が行い、もう1人は計器を確認するという手順を守るべきでしたが、この手順が守られていませんでした。

事故原因

事故の直接的な原因はパイロットエラーとされていますが、背景には様々な要因が複合的に絡み合っていました。

パイロットの経験不足: 機長は事故の4日前に昇格したばかりで、経験が浅く、副操縦士も雇用から3週間しか経っていませんでした。両名ともフェアチャイルド・メトロライナーの操縦に関する十分な訓練を受けておらず、規定に反した勤務体制でした。
悪天候: コーク空港は霧が発生しやすい場所であり、視界不良の状況下では高度な操縦技術が求められます。経験の浅いパイロットの組み合わせは、このような状況下では非常に危険でした。
疲労: 事故機には客室乗務員がおらず、パイロット自身が乗客の案内や飛行準備作業を行っていたため、肉体的・精神的な疲労が蓄積していました。マンクス2は、事故機を夜間は貨物機、日中は旅客機として運用しており、座席の設置作業などもパイロットが行っていました。
会社の対応: 当日の天候は非常に悪く、本来であれば他の空港へ代替着陸すべき状況でしたが、会社側からの代替輸送手段の支援が得られず、着陸を強行せざるを得ない状況でした。
機体の整備不良: フライトレコーダーの記録から、事故機のエンジンに左右で推力差があり、右に傾斜しやすい状態であったことが判明しました。この問題は事故の106時間前から発生していましたが、整備は行われていませんでした。

これらの要因が重なり、3度目の着陸進入時に、機長が誤って左エンジンをリバース位置に入れてしまい機体が左に傾斜、それを修正しようと出力を上げたところ、エンジンの推力差により今度は右に傾斜しました。操縦とエンジン推力調整を別々のパイロットが行っていたため、機体の傾斜に対する修正操作が遅れ、右主翼が滑走路に接触し、機体は横転大破しました。

事業者について

マンクス2は2006年に設立されたスペイン資本の会社で、拠点はマン島のマン島空港にありました。インターネットでチケットを販売するバーチャルエアラインであり、事故機はスペインの会社が所有し、整備は外注されていました。事故後、マンクス2は2012年12月に運航を停止し、MBOにより設立されたシティウイングに事業が移管されました。

関連項目

 エア・インディア182便爆破事件 - テロリストの爆弾により、エア・インディアのボーイング747が空中分解して墜落した事件。偶然にも墜落現場は本事故の現場となったコークから290km沖でした。
エア・モーレア1121便墜落事故 - 本事故の4年前にタヒチのモーレア島で発生し、20名が死亡した事故。当初、この事故と同様に方向舵や昇降舵のケーブルの切断が疑われました。
クロスエア3597便墜落事故 - 夜間の悪天候の着陸時に不適切な操縦が原因で発生した航空機事故。この事故時の機長は経歴こそ長かったものの、パイロットとしては不適格な人物でした。
アダム航空574便墜落事故 - ボーイング737がインドネシアのスラウェシ島沖に墜落した事故。悪天候下における技量未熟なパイロットの操縦ミスが原因でしたが、安全性を軽視する運航会社の体質も問題視されました。
航空事故の一覧

注釈

* この事故は、メーデー!:航空機事故の真実と真相第12シーズン第9話「3rd Time Unlucky」で取り上げられています。

もう一度検索