マンフレッド (シューマン)

ロベルト・シューマン『マンフレッド』作品115

ロベルト・シューマンが作曲した『マンフレッド』作品115は、独唱、合唱とオーケストラのための劇音楽です。ジョージ・ゴードン・バイロンの詩劇『マンフレッド』の上演のために書き下ろされ、序曲と15の場面から構成されています。1852年6月13日、ヴァイマルにてフランツ・リストの指揮で全曲が初演されました。

編成

序曲の編成に基づき、基本的には以下の楽器が用いられます。

フルート2
オーボエ2
B♭管クラリネット2
ファゴット2
ナチュラルホルン2
ヴェンティルホルン2
トランペット3
トロンボーン3
ティンパニ1対
弦楽五部

金管楽器が多めに用いられており、豊かな響きが特徴です。特に序曲におけるトランペットの扱いは、シューマンの従来の管弦楽法と比較して進化が見られます。その他、イングリッシュホルン、シンバルなども加わります。

作品の内容

序曲と15の場面から構成されています。

序曲

単独でも頻繁に演奏される、変ホ短調、4分の4拍子のソナタ形式です。冒頭の激しい和音打撃に続き、緩やかな序奏が始まります。オーボエの悲痛な旋律が次第に盛り上がり、トランペットの信号と共にアレグロに入り、3連符とシンコペーションが特徴的な第1主題が弦楽器で提示されます。続いて嬰へ短調で第2主題群が始まり、弦楽器の流れるような旋律と、熱情的な上行旋律が続きます。展開部では第2主題の動機と第1主題の付点リズムの動機が組み合わされ、再現部を経て、第2主題が途切れ途切れに奏でられる中、3本のトランペットが静かに和声的な暗い旋律を奏でます。この部分は特に印象的です。その後、再びテンポが落ち、オーボエの悲痛な旋律が回帰し、静かに曲を閉じます。

第1幕

第1場
精霊の歌: 男女のソリストが順番に歌い、最後は重唱となります。マンフレッドの呼びかけに応じる精霊たちの様子が描かれます。
「おお神よ……」: 美女の姿で現れた精霊に語りかけるマンフレッドの台詞の背景音楽です。
精霊の呪文: 倒れたマンフレッドに向かって男声ソリストが歌いかけます。重く暗い雰囲気が特徴で、オペラのアリアのような形式です。
第2場
ユングフラウ山中のマンフレッド: イングリッシュホルンの牧歌的な旋律が流れます。台詞の伴奏音楽です。

第2幕

前奏曲: 牧歌的で流れるような旋律が特徴です。
第2場
アルプス山中の瀑布のそば: 明るく軽やかな音楽が流れます。台詞の伴奏音楽です。
第4場
アリマニーズの館: 精霊たちの賛歌がニ短調の行進曲として奏でられ、ここではシンバルが加わります。
ネメシスとの対話: 暗く重い旋律が流れます。台詞の伴奏音楽です。
ネメシスの呪文: アスターティの亡霊が登場する場面の台詞の伴奏音楽です。
アスターティとの対話: マンフレッドが心情を吐露する場面で、甘美な旋律が流れます。台詞の伴奏音楽です。

第3幕

前奏曲: 第2幕第4場を彷彿とさせる壮麗な行進曲です。
第1場
マンフレッドの独白: 穏やかな曲調で、台詞の伴奏音楽です。
第4場
マンフレッドの独白: 夜空を眺める場面で、穏やかな曲調です。
死の精霊との対決: 激しい響きが特徴的な台詞の伴奏音楽です。
レクイエム・エテルナム・ドナ・エイス: マンフレッド最期の時を告げる、合唱によるレクイエムです。台詞の伴奏音楽として用いられます。

特徴

管弦楽法においては、トランペットの優れた用法が際立っています。また、台詞の内容や場面に合った音楽が書かれており、劇的な効果を高めています。最終場面で歌われる美しいレクイエムは、シューマンのミサ曲ハ短調を彷彿とさせつつも、さらに洗練された響きを持ち、フォーレを先取りしているとも評価されています。

録音

序曲に関しては多数の録音が存在するため、ここでは全曲盤を紹介します。

カール・シューリヒト指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団、シュトゥットガルト放送合唱団ほか（Urania URN 22.221）

参考文献

岩波文庫『マンフレッド』（小川和夫訳）ISBN 4-00-322161-3
『マンフレッド序曲』フルスコア：Schumann "Manfred" Overture for Orchestra Op.115 Edition Eulenburg No.646

外部リンク

シューマン：「マンフレッド」序曲 - 『大阪交響楽団楽曲解説データベース』より
『マンフレッド』作品115の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

もう一度検索