マーガレット・バービッジ

マーガレット・バービッジ（旧姓：エレノア・マーガレット・ピーチー）は、1919年8月12日にイギリスで生まれ、2020年4月5日にその生涯を閉じました。彼女は天体物理学者として、宇宙の元素がどのようにして生成されるのかという根源的な謎に挑み、その研究は天文学界に大きな影響を与えました。

生い立ちと研究

マーガレットは、グレーター・マンチェスターのストックポートで生まれ、1947年にロンドン大学を卒業しました。翌年には理論天文学者のジェフリー・バービッジと結婚し、夫婦で天文学の研究に携わることになります。1950年代から1960年代にかけては、主にアメリカで研究活動を行い、1957年には、夫のジェフリー・バービッジ、フレッド・ホイル、ウィリアム・ファウラーと共に、有名なB2FH論文を発表しました。この論文では、水素やヘリウムといった軽い元素を除く、宇宙に存在するほとんどの元素が、恒星内部での核融合反応によって生成されるという画期的な理論を提唱しました。また、彼女は銀河の質量を測定した最初の研究者の一人であり、クエーサーの研究においても先駆的な役割を果たしました。

女性差別との闘い

マーガレット・バービッジは、天文学界における女性差別と長年闘ってきた人物でもあります。1947年、カーネギー協会のフェローシップに選出されたものの、当時女性研究者の観測を認めていなかったウィルソン山天文台での研究が受給の条件となっていたため、このフェローシップを辞退せざるを得ませんでした。さらに、1972年には女性として初めてグリニッジ天文台長に任命されたにもかかわらず、伝統的に天文台長に与えられる王室天文官の称号が、マーティン・ライルに与えられるという差別にも直面しました。これらの出来事から、彼女は、女性天文学者に与えられるアニー・J・キャノン賞の受賞を、差別的な意味合いを含んでいるとして辞退しました。

社会的貢献

マーガレット・バービッジは、研究活動だけでなく、天文学界の発展にも大きく貢献しました。1976年から1978年にかけてアメリカ天文学会の会長を務め、1983年からは米国科学振興協会の会長としても活躍しました。これらの役職を通して、彼女は天文学の発展と科学教育の普及に尽力しました。

死去

2020年4月5日、マーガレット・バービッジは、転倒による合併症のため、カリフォルニア州サンフランシスコの自宅で息を引き取りました。彼女の死は、天文学界だけでなく、広く社会に深い悲しみをもたらしました。

受賞歴

マーガレット・バービッジは、その卓越した業績を称えられ、数々の賞を受賞しました。主なものとして、ヘレン・B・ワーナー賞（1959年）、ブルース・メダル（1982年）、ヘンリー・ノリス・ラッセル講師職（1984年）、アメリカ国家科学賞（1985年）、アルベルト・アインシュタイン世界科学賞（1988年）、王立天文学会ゴールドメダル（2005年）などが挙げられます。

遺産

マーガレット・バービッジの功績は、彼女の死後も長く語り継がれることでしょう。彼女の研究は、宇宙の謎を解き明かす上で重要な役割を果たし、また女性科学者に対する差別を無くすための活動は、後世の科学者に勇気を与え続けています。小惑星(5490)バービッジは、彼女の偉大な功績を記念して命名されました。

マーガレット・バービッジは、その生涯を通じて、天文学の発展に貢献し、女性科学者の地位向上に尽力した、まさにパイオニアと呼ぶにふさわしい人物でした。

もう一度検索