マーク・ジョンソン (ミュージシャン)

マーク・ジョンソンは、1953年10月21日にネブラスカ州オマハに生を受けた、アメリカを代表するジャズ・ベース奏者、作曲家、そしてバンドリーダーです。ネブラスカで生まれ、テキサスで育ちました。

彼のキャリアは早くから開花しました。19歳の若さでプロとしての道を歩み始め、フォート・ワース交響楽団で活動したほか、北テキサス大学では名門「One O'Clock Lab Band」に参加。同時に、同大学交響楽団では首席ベーシストを務めるなど、クラシックとジャズの両面で才能を発揮しました。

ジョンソンの名は、ジャズ界に広く知られることとなったのは、1978年に伝説的なピアニスト、ビル・エヴァンスのトリオに加入したことがきっかけです。彼はエヴァンスにとって最後のトリオメンバーとなり、1980年にエヴァンスが亡くなるまで、密度の濃いツアーとレコーディング活動を共にしました。この時期の経験は、彼のその後の音楽性に多大な影響を与えました。2007年には、妻であり自身も著名なジャズ・ピアニスト、歌手であるイリアーヌ・イリアスと共に、ビル・エヴァンスへのトリビュートアルバム『サムシング・フォー・ビル・エヴァンス』を発表しています。

エヴァンス没後、ジョンソンは数多くのジャズ界の巨匠たちから引く手数多となり、その卓越したベースプレイで多くのアルバムに参加しました。彼と共にレコーディングを行ったミュージシャンには、ジョー・ロヴァーノ、マイケル・ブレッカー、スタン・ゲッツ、ボブ・ブルックマイヤー、ゲイリー・バートン、ジョン・アバークロンビー、ビル・フリゼール、パット・メセニー、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ジャック・ディジョネット、ピーター・アースキン、ポール・モチアンなど、枚挙にいとまがありません。

プレイヤーとしての活動と並行して、ジョンソンは自身のリーダープロジェクトも積極的に展開しました。中でも特筆すべきは、1980年代半ばに活動したカルテット、ベース・ディザイアーズです。ビル・フリゼールとジョン・スコフィールドという二人の独創的なギタリスト、そしてドラムのピーター・アースキンという強力な布陣を擁し、ECMレコードから『ベース・ディザイアーズ』と『セカンド・サイト』の2枚のアルバムを発表。これらの作品は世界的な注目を集め、ジョンソンをリーダーとしての地位を確固たるものにしました。また、JMTレコードからはライト・ブレイン・パトロール名義で2枚のアルバムをリリース。その後、ヴァーヴ・レコードからカルテット作品『ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング』を発表しました。このアルバムにはビル・フリゼール、パット・メセニーという個性的なギタリストに加え、ドラムにはジョーイ・バロンが参加しています。

2005年にECMからリリースされたリーダー作『シェイズ・オブ・ジェイド』は、批評家から高い評価を受けました。ピアニストにイリアーヌ・イリアス、テナーサックスにジョー・ロヴァーノ、ギターにジョン・スコフィールド、ドラムにジョーイ・バロンを迎えたこの作品は、『タイム』誌の「5 CDs That Really Swing」という記事でその時期のトップ・ジャズ・リリースの一つに選ばれたほか、『シカゴ・トリビューン』紙の2005年のジャズ・レコーディング・ベスト10にもリストアップされ、さらに2005年のデンマーク音楽賞では最優秀外国人リリース賞を受賞するなど、輝かしい評価を得ました。

『シェイズ・オブ・ジェイド』に続くECMからのアルバムは、2012年の『Swept Away』です。この作品は、妻であるピアニスト、作曲家のイリアーヌ・イリアスとの共同名義となっており、前作に引き続きジョー・ロヴァーノ（テナーサックス）とジョーイ・バロン（ドラム）が参加。全曲オリジナル楽曲で構成されています。

音楽家としてのキャリアに加え、ジョンソンはプロデューサーとしても成功を収めています。特に、妻イリアーヌ・イリアスのコンコード・レコードからのアルバム『メイド・イン・ブラジル』（2016年）と『ダンス・オブ・タイム』（2017年）では共同プロデューサーを務め、これらの作品で合計2つのグラミー賞を獲得しました。

マーク・ジョンソンは、その堅実でメロディアスなベースプレイ、そして作曲家、バンドリーダーとしての多角的な活動を通じて、現代ジャズシーンにおいて重要な存在であり続けています。

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