鉄騎隊

鉄騎隊（Ironsides）

鉄騎隊は、17世紀の清教徒革命（イングランド内戦）において、オリバー・クロムウェルが率いた騎兵隊に付けられたあだ名です。その名前は、クロムウェルが敵から「Old Ironsides（剛勇の人）」と呼ばれたことに由来します。

鉄騎隊の誕生

1642年8月、第一次イングランド内戦が勃発。クロムウェルは故郷ハンティンドンシャーで60人の騎兵隊を組織し、議会派に身を投じました。彼は兵士たちに神と聖書に基づいた説教を行い、信仰による団結を呼びかけました。

エッジヒルの戦いでの敗北後、クロムウェルは「酒場の給仕や職人の軍隊では、上流階級の騎士たちには勝てない。信仰を共有する軍隊が必要だ」と痛感。東部連合に1000人以上の兵を率いて参加し、資金、武器、兵員の確保に奔走しました。そして、自費を投じて文字通り「宗教信者」の軍隊を作り上げました。

鉄騎隊の特徴

鉄騎隊は、冒涜、飲酒、乱暴、不信仰を厳しく禁じ、信仰心の厚い者であれば出自を問わず士官に抜擢しました。この人事方針は、当時一般的であった良家の子弟以外は指揮官になれないという慣習を打ち破るものでした。

クロムウェルは、「自分が何のために戦っているかを知り、その信念を愛する兵士を重んじる」と述べ、平民の士官起用を擁護しました。また、士官の信仰を問題視された際には、「国家に忠実に奉仕する意思があれば、信仰の宗派は問わない」と主張し、国家と宗教を分離して考える姿勢を示しました。その結果、独立派や再洗礼派など、多様な信仰を持つ正直で真面目なキリスト教徒が鉄騎隊に加わりました。中心となったのはピューリタンのジェントリやヨーマン層です。

鉄騎隊の強さ

信仰は軍の団結力を高めました。兵士たちは携帯聖書を携え、自らを神に選ばれた聖者と意識することで士気を高め、敵である王党派への不屈の精神を養いました。クロムウェルも部隊の精鋭化に努め、厳しい訓練と規律を徹底させました。

鉄騎隊は、新たな戦術を駆使しました。戦列を崩さずに一塊となって敵に突撃し、背後に回り込まれてもすぐに再編成して再突撃を仕掛けました。また、不利な状況でバラバラになっても、速やかに集結して集団行動を維持し、攻守両面で優れた能力を発揮しました。

鉄騎隊は会衆制を重視し、独立派の拠点となりましたが、同時に急進的な分離派も入り込み、独立派と分離派の対立も生じました。

鉄騎隊の活躍

1643年10月11日のウィンスビーの戦いでは、「詩篇を歌い感謝しつつ」突撃し、リンカンシャーから王党派を一掃しました。1644年7月2日のマーストン・ムーアの戦いでは、カンバーランド公ルパートの騎兵隊を打ち破り、武名を上げました。ルパートはクロムウェルを称え「Old Ironsides」と呼び、それが鉄騎隊の名称の由来となりました。

鉄騎隊は、その後のニューモデル軍（新模範軍）の中核となり、議会派の勝利に大きく貢献しました。日本では、この新型軍全体を指して「鉄騎隊」と呼ぶこともあります。

まとめ

鉄騎隊は、信仰を基盤とした団結力と規律、そして革新的な戦術によって、清教徒革命における議会派の勝利に大きく貢献した精鋭部隊です。その名称と活躍は、歴史に深く刻まれています。

参考資料

今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院、1984年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
* 清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年。

もう一度検索