ミキス・テオドラキス

ミキス・テオドラキス：ギリシャが生んだ音楽の巨匠

ミキス・テオドラキス（Μίκης Θεοδωράκης, Mikis Theodorakis、1925年7月29日 - 2021年9月2日）は、ギリシャを代表する作曲家であり、20世紀最大の音楽家の一人と称されています。彼の作品は、ギリシャの芸術、文化、そして政治に多大な影響を与えました。

多岐にわたる音楽活動

テオドラキスは、クラシック音楽、オペラ、バレエといった伝統的なジャンルから、ギリシャのポピュラー音楽、そして映画音楽まで、幅広い分野で作曲活動を展開しました。彼の代表作としては、マリア・ファラントゥーリのために書かれた壮大なカンタータ「大いなる歌 (Canto General)」（1980年）、バルセロナオリンピックのために作曲された「Canto Olympico（1992年）」などが挙げられます。また、映画音楽では、「その男ゾルバ（Zorba the Greek、1964年）」、「Z（1969年）」、「セルピコ（1973年）」などが国際的に高い評価を受けています。

政治活動と抵抗

テオドラキスは、音楽家としての活動と並行して、左派の政治家としても積極的に活動しました。第二次世界大戦中には、ナチス・ドイツに対するレジスタンス運動に参加し、逮捕される経験もしました。戦後の内戦時代も左派として活動し、その後パリへ亡命し、音楽の研究に励みました。国外に逃れている間も作曲活動を続け、オペラなどを発表しています。

1967年にギリシャで軍事クーデターが起こると、テオドラキスは軍事政権に抵抗し、再び逮捕されました。釈放後はパリに滞在し、軍事政権が崩壊するまで亡命生活を送りました。1981年からは10年間、国会議員を務め、大臣も経験しました。

獄中での体験を綴った著書『抵抗の日記』は、彼の思想と行動を知る上で重要な資料となっています。2007年には、その功績が認められ、レジオンドヌール勲章を受章しました。

2021年9月2日、96歳でその生涯を閉じましたが、彼の音楽と精神は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

主要作品

交響曲

交響曲第1番(1953)
交響曲第2番「大地の歌」(1981)
交響曲第3番(1981)
交響曲第4番「合唱」(1987)
交響曲第7番「春の交響曲」(1983)

映画音楽

『将軍月光に消ゆ』 (1956)
『ハネムーン』 (1960)
『エレクトラ』 (1961)
『真夜中へ五哩』 (1962)
『死んでもいい』 (1962)
『その男ゾルバ』 (1964)
『魚が出てきた日』 (1967)
『Z』 (1969)
『トロイアの女』 (1971)
『風雪の太陽』 (1973)
『セルピコ』 (1973)
『戒厳令』 (1973)
『ヘルリバー』 (1974) ※日本未公開
『イフゲニア』 (1978)
『霧』 (1989)

著書

『抵抗の日記』（西村徹、杉村昌昭訳/河出書房新社/1975）

受賞歴

英国アカデミー賞 作曲賞
1969年: 『Z』
英国アカデミー賞 作曲賞ノミネート
1973年: 『戒厳令』
1974年: 『セルピコ』

ミキス・テオドラキスは、その音楽を通して、ギリシャの魂を世界に伝え、社会正義と自由のために戦い続けた不屈の精神を持つ人物でした。

もう一度検索