ミクリガヤ
ミクリガヤ (Rhynchospora malasica) について
ミクリガヤはカヤツリグサ科に属する多年生草本です。主に熱帯地域に生息し、日本では特に南岸地域に分布していますが、その存在は非常に珍しいものです。日本国内では本州の静岡県以西、九州、南西諸島で見られるほか、国外では朝鮮半島や台湾、マレー半島、インドネシアなどにも生育しています。
特徴
この植物は根茎から多くの直立した茎を伸ばし、草丈はおおよそ40から100センチメートルに達します。表面は滑らかで硬い茎は、独特の三稜形をしています。葉は茎の中ほどから生え、広線形で、長さは40センチメートル、幅は5から10ミリメートルです。また、葉の基部には長い鞘が形成されています。
花の時期は8月から10月で、この時期には茎の上部付近に3から5の分花序が形成されます。分花序は小穂が頭状に密集しており、約1.5センチメートルの直径を持ちます。小穂は広披針形で長さは約7ミリメートル、鱗片は螺旋状に配置されています。果実は広倒卵形で、長さは2から2.5ミリメートル、暗褐色で光沢はありません。花被片は細長く、表面は滑らかです。
生育環境
ミクリガヤは日当たりの良い湿地に自生します。特に低地や丘陵地の湿地帯で見られ、水苔が生えるような湿原に生育しています。この植物が育つためには、周囲に高い草が生えない特定の環境が求められます。分布が限られているため、特定の湿潤な環境が必要不可欠です。
分類と近縁種
ミクリガヤが属するミカヅキグサ属には、全世界で約350種あり、日本にはそのうち11種が生息しています。多くの種は小穂が散房状に配置されていますが、本種のように頭状に集まる例は珍しく、あまり他の種と混同されることはありません。近縁種にはイガクサ（R. rubra）やシマイガクサ（R. boninensis）がありますが、これらの花序は分枝のない枝先につきます。
保護状況
環境省のレッドデータブックでは、ミクリガヤは絶滅危惧IB類に指定されています。具体的には静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、山口県、佐賀県、宮崎県、沖縄県などで絶滅危惧I類に分類されており、鹿児島県では絶滅危惧II類に指定されています。全国的に見ると、観察される個体数は非常に少なく、希少な状況にあります。
特に福岡県では絶滅したと考えられており、2014年の調査では、全国でわずか10メッシュしか報告がありませんでした。見かけには反して非常に脆弱な生態を持っており、富栄養化に適応できず、他種の高草が繁茂することで消滅の危険が高まっています。
希少植物の撮影を行った永田は、ミクリガヤを探すために宮崎県を訪れましたが、高草が茂っており、本種を発見できませんでした。このように、ミクリガヤはその生態と生育環境において特に注意が必要な植物です。
参考文献
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