ミスタートウジン

ミスタートウジンは、1986年北海道門別町の白井牧場で生まれたサラブレッドです。父はイギリスのミドルパークステークス優勝馬ジュニアス、母は中央競馬で活躍したナオユキ。幼少期から筋肉質な体格で知られ、牧場長は「サラブレッドとも道産子とも違う」と評しました。

1988年10月、デビュー戦を迎えますが、7着と敗れ、2戦目で初勝利を挙げます。4歳時には皐月賞に出走するも13着に終わりました。その後、条件クラスを転戦しますが、5歳になってダート戦線に転向すると、才能が開花。4戦4勝と好成績を収め、ダート路線の主軸へと成長していきました。

6歳でオープン特別競走に昇格。1991年には武蔵野ステークスを制覇。兄のミスターシクレノンとの兄弟出走も果たしています。その後、春夏は完全休養し、秋冬にダート競走に集中するスタイルを確立しました。特に1400～1800メートルの距離で強さを発揮し、8歳時にはガーネットステークスと平安ステークスを連勝。常に上位入賞を果たし、賞金を獲得し続けました。

しかし、9歳になると成績は下降。1994年の帝王賞では引退も検討されたものの、2着という結果を残し、現役続行が決まりました。その後も年齢を重ねるにつれ、厩舎には「動物虐待だ」といった非難の電話も寄せられるようになりました。一方で、トウジンを見学したいという問い合わせが増え、「トウジン様」宛の贈り物も届くようになりました。

10歳を超えてからも現役を続けた理由について、調教師の福島信晴氏と馬主の藤立啓一氏は、それぞれ異なる理由を述べています。長年の休養を挟みながらも、13歳時には黒船賞で4着と健闘。15歳時には中央競馬の最高齢出走記録となる銀嶺ステークスに出走。100戦出場を目指しフェブラリーステークス、黒船賞への出走を予定していましたが、怪我により断念し、99戦11勝で引退しました。重賞勝利こそありませんでしたが、獲得賞金は4億円を超えました。

引退後は種牡馬となりました。馬主の藤立氏や調教師の福島氏の強い意向、そしてメディアや競馬ファンの注目により、種牡馬入りが実現。初年度には2頭の産駒が誕生し、うち1頭が勝利を収めるという話題も生まれました。しかし、競走馬として大成した産駒は現れませんでした。2002年に種牡馬を引退し、白井牧場、日高ケンタッキーファーム、乗馬クラブを経て、晩年は白井牧場で余生を送りました。2013年12月17日、老衰のため死亡しました。

ミスタートウジンは、半兄にミスターシクレノン（鳴尾記念、ダイヤモンドステークス勝ち）がいます。母ナオユキは1972年のオークス2番人気馬で、5代母は1926年の帝室御賞典勝ち馬パシフイツク（クヰンフロラー）。

ミスタートウジンは、田中康三厩舎から福島信晴厩舎に移籍しましたが、これは厩務員の西谷憲氏が移籍した際に、「トウジンは西谷さんにしか任せられない」という馬主の藤立氏の強い要望によるものでした。

ミスタートウジンは、重賞未勝利ながらも、その長く輝かしい現役生活、そして多くの競馬ファンの心を掴んだその存在感は、競馬史に大きな足跡を残しました。その物語は、努力と情熱の象徴として、多くの人に感動を与え続けます。

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