ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画

ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』は、2019年に公開されたヒンディー語のインド映画です。原題は「Mission Mangal」で、「火星計画」を意味します。ジャガン・シャクティが監督を務め、インド宇宙研究機関（ISRO）が行った同国初の火星探査計画、マーズ・オービター・ミッション（MOM）に参加した科学者たちの実際のキャリアを大まかなベースとしたドラマ作品となっています。

主演はアクシャイ・クマールとヴィディヤー・バーラン。彼らを中心に、ソーナークシー・シンハー、タープシー・パンヌ、ニティヤー・メネン、キールティ・クルハーリー、シャルマン・ジョーシー、H・G・ダッタトレーヤ、ヴィクラム・ゴーカレーといった実力派俳優陣が、様々な背景を持つ科学者や技術者を演じています。

あらすじ

物語は、2010年末に行われたISROの大型ロケットGSLV-F06の打ち上げ失敗から始まります。打ち上げ直前のチェックで発見された軽微な異常を見過ごしたプロジェクトディレクターのタラ・シンデは、責任者のラケーシュ・ダワンと共に責任を問われ、予算も人員も限られた火星探査計画「マーズ・オービター・ミッション」（MOM）へと異動させられます。

MOMは、当時のISROにとっては実現不可能とも思われる困難な計画でした。しかし、タラは家庭での何気ない出来事（プーリーを揚げる際にガスを節約する主婦の知恵）から、少ない燃料で探査機を地球の重力圏外に送り出す画期的なアイデアを閃きます。それは、地球周回軌道を利用し、何度もスイングバイを繰り返すことで燃料を温存し、推力の低いPSLVロケットでも火星を目指せるというものでした。

タラとラケーシュはこの斬新なプランをISRO幹部に提案します。NASAからの招聘科学者ルパート・デサイは、PSLVの能力不足などを理由に強く反対しますが、ISRO総裁はラケーシュたちの熱意を受け入れ、ミッションの始動を許可します。

しかし、ルパートから提供されたチームメンバーは、打ち上げ経験のない若手や定年間近のベテランばかり。彼らは当初、計画の実現性を疑い、士気も低い状態でした。さらに追い打ちをかけるように、計画の延期が決定し、一部のメンバーはチームを去り、タラ自身も一度は辞職を決意します。

窮地に立たされたラケーシュは、地球と火星の最接近時期を逃せないこと、他の計画延期で予算を確保できる可能性を訴え、再び総裁を説得します。予算は当初の半分に削減されたものの、ミッションは再開。タラを含むメンバーが再招集されますが、士気はまだ戻りません。ラケーシュは「科学者になった時の夢を取り戻そう」と諭し、タラは各自が科学者を志した原点を思い出す「科学者の誕生日」というパーティーを企画。これによりメンバーの情熱が再燃し、厳しい制約の中で様々な困難を乗り越えるための創意工夫を重ねながら、MOMプロジェクトを遂行していきます。

チームは、航法・通信、機体設計、自律制御、推進など、それぞれの専門分野で問題を解決していきます。軍人の夫を支えながら仕事に復帰した者、結婚と出産を巡る葛藤を抱える者、夫の不倫に悩む者、孤児として育ちNASA行きを夢見る者、女性に縁がなく占いを気にする者、定年間近のベテラン技術者など、メンバーは各自が個人的な問題を抱えながらも、ミッション成功に向けて一丸となっていきます。

幾多のハードルを越え、探査機「マンガルヤーン」は2013年11月5日に打ち上げられます。地球周回軌道への投入は成功しますが、上位軌道への遷移で噴射失敗が発生し、ミッションは遅延。数か月後には太陽風による通信障害も発生しますが、これもチームの尽力で回復します。驚くべきことに、通信断絶中に太陽風が探査機を加速させ、軌道投入時の遅延を取り戻す結果となります。

そして、打ち上げから298日の飛行を経て、2014年9月24日、マンガルヤーンは無事火星周回軌道への投入に成功します。これは、世界で4番目の快挙であり、最初の挑戦で火星軌道到達を成し遂げた世界初の国となる歴史的瞬間でした。

製作と反響

本作は、監督のジャガン・シャクティがアクシャイ・クマールにプロットを持ち込んだことから企画がスタートしました。2018年11月に製作が発表され、主要撮影が進められました。公開はインドの独立記念日である2019年8月15日。

映画は批評家から概ね好意的な評価を得ました。史実に基づきながらも、エンターテイメントとして楽しめるドラマティックな展開や、個性豊かなキャラクターたちの描写が高く評価されました。興行的にも大成功を収め、全世界で29億ルピーを超える収入を記録。特にインド国内での初日収入は、公開当時、アクシャイ・クマール主演作としては最高記録となりました。

本作は、単なる科学プロジェクトの記録ではなく、様々な困難や個人的な問題を抱えながらも、情熱とチームワークで国家的な偉業を成し遂げた人々の姿を描いた、感動的な人間ドラマとして多くの観客に支持されました。

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