ミトラダテス2世

ミトラダテス2世：パルティア王国最盛期の王

ミトラダテス2世（在位：紀元前124年/123年頃 - 紀元前88年/87年）は、アルサケス朝パルティア王国の王であり、その治世はパルティア王国の最盛期を迎えました。彼は「大王（バシレウス・メガス）」、「諸王の王（バシレウス・バシレオン）」とも呼ばれ、その権勢を誇りました。

生涯

アルタバヌス1世の息子として生まれたミトラダテス2世は、紀元前123年頃に父の後を継いでパルティア王となりました。即位後、まずバビロニアの鎮圧とカラケネ王国の打倒に取り組み、その成功は紀元前121年/120年のヒスパオシネスの銅貨に刻まれたミトラダテス2世の称号と肖像によって裏付けられています。

陸上交易の発展

ミトラダテス2世の治世下では陸上交易が大きく発展し、パルティア王国に莫大な富をもたらしました。中国の歴史書『史記』には、張騫がパルティア王国（安息国）を訪れたことが記されています。首都を訪れた張騫一行は手厚く迎えられ、帰国時にはパルティアの使節がダチョウの卵や奇術師を伴って同行したと伝えられています。

領土拡大と権力集中

領土拡大に伴い、ミトラダテス2世は属州に大きな権力を与えざるを得なくなり、「諸総督の総督」と呼ばれたゴタルゼスのような有力者が現れるようになりました。また、パルティア王国東部に侵入していたサカ族の勢力が衰退したため、失地を次々と回復することに成功しました。

アルメニアへの影響力確立

ミトラダテス2世はアルメニア王国にも兵を進め、アルメニア王子ティグラネスを人質にとり、長年にわたってパルティアの影響下に置きました。紀元前94年頃、ティグラネスの父であるアルメニア王アルタバスデスの死後、ティグラネスはパルティア軍の支援を受けてアルメニア王位に就き、その代償としてパルティアは「七十か所の渓谷」を獲得しました。アルメニアを同盟国とすることで、ミトラダテス2世はセレウコス朝への侵攻に注力できるようになりました。

セレウコス朝との戦い

パルティア軍の侵攻を受けたセレウコス朝のアンティオコス10世エウセベス・フィロパトルは、デメトリウス3世エウカエロスやプトレマイオス8世ラティルスと協力して応戦しましたが、戦死しました。

ローマとの接触

紀元前92年、共和政ローマのカッパドキア総督ルキウス・コルネリウス・スッラがアリオバルザネスをカッパドキアの王に復位させると、パルティア軍はローマとの交渉のため、オロバズスを使者として派遣しました。しかし、オロバズスは友好的な軍事同盟を提案したにもかかわらず、ローマ側からは貢納国になることを求められ、パルティアはローマの従属国とみなされるという失態を演じてしまいます。この失態により、オロバズスはパルティアの威信を傷つけた罪で処刑されました。

その後

紀元前88年、セレウコス朝で内紛が発生し、フィリッポス・エピファネス・フィラデルフォスがベロエア（アレッポ）で包囲されると、親パルティア派のストラトはアラブ人の暴君アジーズとパルティア人総督ミトラダテス・シナケスに助けを求め、デメトリウス3世エウカエロスを降伏させました。捕虜となったデメトリウス3世エウカエロスはミトラダテス2世の前に引き出され、手厚いもてなしを受けました。

ミトラダテス2世はその後まもなく亡くなり、彼の統治していた領土はイラン、クルディスタン、メソポタミア北部に及びました。バビロニアは総督であったゴタルゼス1世が独立して統治しました。

妻

* アリヤザテ（アウトマ）：アルメニア王ティグラネス2世の娘

ミトラダテス2世の治世は、パルティア王国を強大な国家へと押し上げた重要な時代であり、彼の業績は後世に長く語り継がれることとなりました。

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