ミトラダテス3世

ミトラダテス3世（在位：紀元前58年/57年 - 紀元前55年）は、パルティア王国の王であり、フラーテス3世の子で、オロデス2世の兄弟にあたります。

王位継承争いと失脚

父王フラーテス3世が殺害されると、ミトラダテス3世は兄弟であるオロデス2世と王位を巡って争いました。貨幣の研究から、当初はミトラダテス3世が王位を継承したと考えられています。しかし、彼は貴族からの支持を得られず、パルティアの長老会によって追放され、代わりにオロデス2世が王位に就きました。

ローマへの援助要請と裏切り

失脚したミトラダテス3世は、ローマの将軍アウルス・ガビニウスに庇護を求め、王位奪還の援助を要請しました。アウルス・ガビニウスはこれに同意し、ユーフラテス川を渡る準備をしましたが、プトレマイオス朝のプトレマイオス12世アウレテスも亡命しており、アウルス・ガビニウスに復位の援助を求めていました。プトレマイオス12世がミトラダテス3世をはるかに上回る金額を提供したため、アウルス・ガビニウスはエジプトへの遠征を優先し、ミトラダテス3世への支援を打ち切りました。

パルティア奪還の試みと最期

ミトラダテス3世は、紀元前55年までアウルス・ガビニウスに従軍していましたが、最終的に見切りをつけ、単独でパルティアの奪還を試みました。彼はバビロンと首都セレウキアを占領し、そこで自身の貨幣を鋳造しました。その貨幣には、勝利を象徴するテュケーが新しい支配者を歓迎する様子が描かれていました。しかし、オロデス2世が派遣したスレナス率いる軍隊によってセレウキアを奪還され、バビロンは長期の包囲の末に降伏しました。

ミトラダテス3世は、血縁を頼りオロデス2世に降伏しましたが、オロデス2世は彼を兄弟ではなく敵とみなし、処刑しました。オロデス2世はミトラダテス3世が発行した貨幣を没収し、改鋳させました。新しい貨幣には、セレウキアが恭順の意を示し、オロデス2世が右手を差し伸べて助け起こす様子が描かれました。

参考資料

ニールソン・C・デベボイス『パルティアの歴史』小玉新次郎、伊吹寛子訳（山川出版社、1993年、ISBN 4634658607）
ポンペイウス・トログス / ユスティヌス抄録『地中海世界史』合阪學訳（京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、1998年、ISBN 4876981078）

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