ミニディスク・マイクロディスク

ミニディスクとマイクロディスク：幻のデジタルオーディオディスク

ミニディスク（Mini Disc, Mini Disk, Mini-Disk）とマイクロディスク（Micro Disc, Micro Disk, Micro-Disk）は、1980年代に西ドイツの音響機器メーカー、テレフンケンとレコードレーベルのテルデックによって共同開発が進められていたデジタルオーディオディスク（DAD）です。どちらも略称はMDとされます。この二つのディスクは、同時期に登場したコンパクトディスク（CD）と並び、デジタルオーディオの黎明期を彩る技術の一つでした。しかし、日本のソニーが1992年に発表したMiniDisc（ミニディスク）とは全く異なる規格であり、DADという共通点以外にはほとんど関連性はありません。

歴史

1980年、DAD規格の標準化を目指す「DAD懇談会」は、各社からシステムの提案を求めました。その際に提案された3つの方式のうちの一つが、このミニディスクとマイクロディスクでした。他の二つはCDとAHDです。テレフンケンとテルデックは、この技術を基にデモ用の試作品を製作しましたが、残念ながら商品化には至りませんでした。

特徴

ミニディスクは直径135mmで収録時間は60分、マイクロディスクは直径75mmで収録時間は10分と、それぞれアルバム用とシングル用として想定されていました。サイズと収録時間以外は、両ディスクの記録方式やプレイヤーは共通でした。

信号検出方式は、TED社（テレフンケン、テルデック、英デッカの合弁）が開発した（アナログ）ビデオディスクTeD（Television Disc）と同じ圧電式を採用していました。この方式は、圧電素子を使ってディスクの溝の凹凸を読み取るというもので、機械的な動作を伴います。これは、従来のアナログレコードの技術を基盤としている一方、記録密度は非常に高く、平均面密度で60分CDの57%に達していました。当時としては、CDやAHDのような全く新しい方式よりも、確実かつ低コストで実現できる技術として評価されていました。

また、記録方式において、CDが固定線速度を採用しているのに対し、ミニディスクとマイクロディスクはアナログレコードやAHDと同様に固定角速度を採用しています。これにより、ディスクの内側と外側で記録密度が変化する設計となっています。

音声信号については、CDの44.1kHz・16bit・1.4112Mbpsに対し、ミニディスクとマイクロディスクは48kHz・14bit・1.344Mbpsという仕様でした。


ミニディスクとマイクロディスクは、その登場から商品化には至らなかったものの、当時のデジタルオーディオ技術の進歩を象徴する存在であり、その技術的な側面は非常に興味深いと言えるでしょう。

参考文献

• - 中島平太郎・小川博『図解コンパクトディスク読本』オーム社、1996年（改訂3版）、ISBN 4-274-03472-0

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