ミヤマキリシマ

ミヤマキリシマ（深山霧島）

ミヤマキリシマ（学名: Rhododendron kiusianum）は、ツツジ科ツツジ属に分類される半落葉広葉樹の低木です。九州地方の山岳地帯に自生し、特に霧島山、阿蘇山、九重山などの高山で見ることができます。

名称の由来

ミヤマキリシマの名前は、植物学者の牧野富太郎によって1909年に命名されました。彼は、このツツジが深い山に咲くことから、「深山」という言葉を冠しました。また、古くから霧島山に多く自生していたことから、「霧島」という言葉も組み合わされました。

江戸時代の地誌『三国名勝図会』には、霧島山に咲く「映山紅」という花が記載されており、これがミヤマキリシマのことだと考えられています。坂本龍馬も新婚旅行で霧島を訪れた際、その美しさを姉に宛てた手紙の中で、「きり島つゝじが一面にはへて実つくり立し如くきれいなり」と書き記しています。

分布と生育環境

ミヤマキリシマは、九州各地の高山に分布しています。火山活動によって生態系が撹乱された場所でも、いち早く生育できる先駆植物としての性質を持っています。しかし、森林が発達すると、日陰になり生育が難しくなるため、森林化が進むと姿を消してしまう傾向があります。

主な自生地としては、霧島山やえびの高原のほか、阿蘇山、九重山、雲仙岳、鶴見岳などが挙げられます。これらの場所では、ミヤマキリシマが斜面一面に群生し、見事な景観を作り出しています。

特徴

ミヤマキリシマは、高さ1〜2m程度の低木で、枝が密に分かれています。葉は小型で、長さ8〜20mmの長楕円形をしており、表面に毛が生えています。夏に出た葉の一部は落葉せずに冬を越すのが特徴です。

花期は5月下旬から6月中旬で、枝先に2〜3個ずつ花を咲かせます。花は直径20〜30mmの漏斗形で、先が5つに裂けています。花の色は紅紫色が基本ですが、朱紅色、桃色、淡紅色、白色など、さまざまな色が見られます。雄しべは5個です。

満開時には、山肌を埋め尽くすように咲き誇り、その美しい光景は多くの人々を魅了します。また、気候によっては秋にも少し花を咲かせることがあります。

庭園樹としてもよく植えられ、その美しい花は人々の目を楽しませています。ただし、害虫としてキシタエダシャクが大発生することがあるため、注意が必要です。

都道府県・市町村の花

ミヤマキリシマは、その美しさから、以下の自治体で県や市町村の花として指定されています。

都道府県の花
長崎県：「雲仙ツツジ」の名称で指定（種としてのウンゼンツツジとは異なる）
鹿児島県
市の花
長崎県：雲仙市
大分県：竹田市
鹿児島県：霧島市
町の花
大分県：玖珠郡九重町

かつて指定していた自治体（消滅）
大分県：直入郡久住町（現在の竹田市の一部）
熊本県：阿蘇郡一の宮町
鹿児島県：姶良郡牧園町、霧島町（両町とも現在の霧島市の一部）

参考文献

辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日。ISBN 4-12-101834-6。
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、33頁。ISBN 978-4-05-403844-8。

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