えびの高原

えびの高原

えびの高原は、九州南部に位置する霧島山の韓国岳、蝦野岳、白鳥山、甑岳に囲まれた標高約1,200mの盆地状の高原です。宮崎県えびの市の南東部に広がり、霧島錦江湾国立公園の一部を形成しています。

地理

狭義のえびの高原は、韓国岳の北西斜面に広がる約0.8平方キロメートルの火山性扇状地を指しますが、広義にはこれらの山々に囲まれた約5平方キロメートルの盆地全体を指します。高原内には不動池、六観音[[御池]]、白紫池などの火口湖が点在し、これらの池を巡る自然研究路は「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に選ばれています。また、韓国岳や大浪池への登山道も整備されており、霧島山登山の拠点としても利用されています。さらに、温泉も湧き出ており、保養地としても人気があります。

地質的には、韓国岳火口から噴出した凝灰角礫岩や、硫黄山、不動池、六観音[[御池]]、白紫池から噴出した完新世溶岩などで覆われています。地下には倒木が埋没した地層があり、過去の火山活動と森林化が繰り返されてきたことを示唆しています。

生物

韓国岳北西斜面の火山性扇状地はススキ野が広がり、秋には赤く染まります。これは硫黄山から噴出する亜硫酸ガスが酸化して希硫酸となり、ススキに含まれるアントシアンに作用するためと考えられています。また、えびの高原特有の気象条件（雨の多さ、秋の気温低下、強い紫外線）もこの現象に関与しているとされています。周辺の丘陵地にはアカマツなどの美しい森林が広がり、「森林浴の森100選」に選ばれています。

植物では、世界でもえびの高原近辺にしか自生しないノカイドウ（天然記念物指定）や、ミヤマキリシマの群落、コツクバネウツギ、イワカガミ、ミヤマイツルソウなどの高山植物が見られます。動物では、キュウシュウジカやイノシシなどが生息しており、秋には雄のシカが雌を呼ぶ鳴き声が響き、「日本の音風景100選」に選ばれています。

歴史

「えびの」という地名の由来には諸説あり、秋にススキ野が葡萄色に変わる様子から名付けられたという説が一般的ですが、入り江（鹿児島湾）を望む火山（韓国岳）の裾野を意味する江火野が語源であるという説もあります。正確な由来は不明です。

10世紀中頃には性空が修行に訪れ、江戸時代には島津氏がたびたび立ち寄りました。江戸時代以降、硫黄山付近では硫黄の採掘が行われるようになりました。1950年代に入ってから宮崎県が中心となり、観光地としての整備が進められました。当初は硫黄採掘者のための小屋がある程度でしたが、1951年に不動池付近にロシア風の山小屋が建設され、登山客を集めるようになりました。1953年には飯野町からの県道が開通し、県営宿舎も開業しました。1958年には北霧島有料道路（県道1号）が開通し、アクセスが大幅に改善されました。この道路建設には、当時の国会議員である瀬戸山三男の尽力があったとされています。また、岩切章太郎によってえびの高原ホテル（当時の名称は霧島高原ホテル）が建てられ、保養地としての整備が進みました。観光開発初期は知名度が低かったものの、当時の日本国有鉄道西部支社長がえびの高原を訪れたことがきっかけで、準急列車の愛称に「えびの」が採用され、全国的に知られるようになりました。

施設

えびのエコミュージアムセンター
足湯の駅えびの高原
えびの高原キャンプ村
えびの高原スケート場
えびの高原ホテル
環境省えびの管理官事務所

交通

宮崎県道・鹿児島県道1号小林えびの高原牧園線が利用できます。

関連項目

霧島錦江湾国立公園
えびの高原温泉
霧島山

参考文献

えびの市郷土史編さん委員会編　『えびの市史　上巻』　宮崎県えびの市、1994年
えびの市郷土史編さん委員会編　『えびの市史　下巻』　宮崎県えびの市、1998年
霧島山総合研究会編　『霧島山総合調査報告書』　1969年

もう一度検索