ミュンヘン国際音楽コンクール

ミュンヘン国際音楽コンクール（Internationaler Musikwettbewerb der ARD）は、ドイツ公共放送連盟（ARD）が主催し、毎年ミュンヘンで開催される国際音楽コンクールです。1952年の第1回開催以来、世界的に権威のある音楽コンクールの一つとして、その名を知られています。

歴史と概要

コンクールは1952年にピアノ部門のみで始まりましたが、翌1953年からはピアノ、ピアノデュオ、ヴァイオリン、ヴァイオリンとピアノのデュオ、木管楽器、金管楽器、打楽器、声楽など、4〜7部門を設けて開催されています。特に管楽器と打楽器部門は、ジュネーヴ国際音楽コンクールと並び、世界で最も権威のあるコンクールとして評価されています。このコンクールからは、ハインツ・ホリガー、ペーター＝ルーカス・グラーフ、カール・ライスター、クラウス・トゥーネマン、ヘルマン・バウマン、モーリス・アンドレ、ブラニミール・スローカー、ラデク・バボラーク、ペーター・ザドロ、吉原すみれといった、国際的に活躍する数多くの著名な演奏家が輩出されています。

日本人入賞者

これまでに多くの日本人音楽家がミュンヘン国際音楽コンクールで入賞を果たしており、その活躍は目覚ましいものがあります。以下に主な日本人第1位受賞者を記します。

1970年: 東京クヮルテット（弦楽四重奏部門）
1980年: 田中淑恵（声楽部門）
1983年: 伊藤恵（ピアノ部門）
1984年: 久保田巧（ヴァイオリン部門）
1997年: 清水直子（ヴィオラ部門）
2005年: 岡崎慶輔（ヴァイオリン部門）
2018年: 葵トリオ（ピアノ三重奏部門）(小川響子（ヴァイオリン）・伊東裕（チェロ）・秋元孝介（ピアノ）)
2019年: 佐藤晴真（チェロ部門）
2021年: 岡本誠司（ヴァイオリン部門）

ヴァイオリン部門の変遷

ヴァイオリン部門は、1953年から2021年までに計21回開催されています。1958年からは入賞順位がつけられるようになりました。1958年以降の開催は19回ですが、その中で第1位を獲得した演奏家はわずか6名（日本人3名、ポーランド人2名、韓国人1名）にとどまり、多くの年で1位なし、または2位、3位という結果になっています。かつては特に難関とされていたヴァイオリン部門ですが、近年はコンクールの方針転換により、審査の厳格さは以前と比べて緩和されています。

ヴァイオリン部門歴代入賞者

以下に1953年以降のヴァイオリン部門入賞者を記載します。

1953年: ミシェル・ブシノー(フランス)、イゴール・オジム(ユーゴスラビア)、エディト・パイネマン(西ドイツ)（順位なし）
1956年: テッサ・ロビンス(イギリス)（順位なし）
1958年: 第2位オスカー・ヤッコ（フィリピン）
1961年: 第2位志田とみ子（日本）、ヨッシ・ツィヴォーニ(イスラエル)、第3位ゲルハルト・ヘッツェル（西ドイツ）
1966年: 第1位コンスタンティ・クルカ（ポーランド）、第2位イザベラ・ペトロシアン(ソ連)、第3位ユーリー・マズルケヴィッチ(ソ連)
1969年: 第2位クリスチャーノ・ロッシ(イタリア)、柳田昌子（日本）、第3位エミー・ヴェルヘイ（オランダ）
1972年: 第2位ニラ・ピエロ(フランス)、第3位エルネスト・コヴァチッチ(オーストリア)
1975年: 第2位ドーラ・シュワルツバーグ(イスラエル)、第3位カヤ・ダンチョフスカ（ポーランド）、エフゲン・サーブ(ルーマニア)
1978年: 第2位キム・ヘギョン(韓国)、第3位オリヴィエ・シャルリエ（フランス）、イリーナ・ツェイトリン（無国籍）
1981年: 第2位グエン・ホエビン(カナダ)、第3位フローリアン・ゾンライトナー(西ドイツ)
1984年: 第1位久保田巧（日本）、第2位クリスチャン・テツラフ（西ドイツ）、第3位ペーター・マツカ(アメリカ)
1988年: 第2位イ・ミギョン(韓国)、第3位ソニグ・チャケリアン（イタリア）
1992年: 第2位エツェツ・オフェル(イスラエル)、第3位パーヴェル・シュポルスル(ロシア)、スコット・セント・ジョン（カナダ）
1995年: 第1位ピョートル・プラヴネル(ポーランド)、第2位ベティナ・グラディンガー(オーストリア)
1999年: 第2位ファン・ビン(中国)、第3位アンドレイ・ヴィエロフ(ウクライナ)、フランチェスコ・マナラ（イタリア）
2001年: 第2位アンネッテ・フォン・ハーン(ドイツ)、第3位ヤメイ・ユ(ドイツ)、カン・ミンジュン(韓国)
2005年: 第1位岡崎慶輔（日本）、第2位山田晃子（日本）、第3位カティア・ラーママン(ドイツ)
2009年: 第1位パク・ヘヨン(韓国)、第2位白井圭（日本）【聴衆賞】、第3位リリー・フランシス(アメリカ)、特別賞セルゲイ・ドガディン（ロシア）
2013年: 第2位キム・ボムソリ（韓国）、クリステル・リー（アメリカ）
2017年: 第2位サラ・クリスティアン(ドイツ)、アンドレア・オビソ(イタリア)、第3位クリスティーン・バラナス（ラトビア）
2021年: 第1位岡本誠司（日本）、第2位ドミトリー・スミルノフ（ロシア）、第3位アレクサンドラ・ティルシュ（モルドバ/ルーマニア）【聴衆賞】

ミュンヘン国際音楽コンクールは、その長い歴史と高い水準により、世界中の音楽家にとって重要な登竜門の一つとなっています。

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