ミユビシギ

ミユビシギ（三趾鷸）

ミユビシギ（学名：Calidris alba）は、チドリ目シギ科に分類される鳥類の一種です。英名はSanderlingと呼ばれます。和名の「三趾鷸」は、その特徴的な足の指の数に由来しています。

形態

全長は約19センチメートルほどの中型のシギです。最も特徴的なのは、多くの個体で後ろ向きに伸びる第一趾（後指）が見られない点です。この点が、和名の「三趾鷸（みゆびしぎ）」の直接的な由来となっています。ただし、ごくまれにわずかな痕跡として第一趾を持つ個体も確認されています。

季節によって羽の色合いが大きく変化します。冬の羽色は全身が淡い灰白色で、翼の縁の部分が黒く際立ちます。一方、夏羽に換羽すると、頭部、背中、そして翼は鮮やかな赤褐色に染まり、腹部と喉は白色になります。雌雄による外見の違いはほとんどありません。嘴と足の色は一年を通して黒色です。

分布

繁殖地は、ユーラシア大陸、北アメリカ、グリーンランドといった北極圏の広大な地域に点在します。繁殖期が終わると、冬を越すために南へと長距離の渡りを行います。その移動範囲は非常に広く、中央アメリカから南アメリカ、アフリカ大陸、さらには東南アジアやオーストラリア方面にまで及びます。長距離を移動するシギ類の中でも特に有名な種の一つです。

日本には、主に春秋の渡りの時期に旅鳥として飛来し、観察されます。しかし、本州の中部より南の地域では、一部の個体がそのまま冬鳥として留まり越冬することもあります。また、繁殖に参加しない若い個体の中には、7月から8月の夏の間も日本国内に滞在し続けることがあります。

生態

繁殖期以外は、海岸の砂浜や岩場を主な生息地としますが、河口や干潟で見られることもあります。通常は数羽から数十羽の比較的小さな群れで行動していますが、餌が豊富な場所などでは数百羽にもなる大群を形成することもあります。

餌を探す際は、海岸の砂浜の波打ち際を小走りに活発に動き回る姿が特徴的です。波が引いた後に露出した砂地や、打ち上げられた海藻などに潜む貝類、甲殻類、昆虫類などを捕食します。時には岩場に付着している海藻や苔類を食べることもあります。

繁殖期は主に6月から7月にかけてで、ツンドラの開けた場所や岩石の多い平原などに巣を作ります。巣は地上に浅い窪みを掘っただけの簡素なもので、通常4個の卵を産みます。この鳥の繁殖行動には独特の特徴があり、複婚や二重巣卵体制をとることが多いとされています。これは、一羽の雌が複数の雄と繁殖したり、一対のつがいで二つの巣を作り、それぞれを雄と雌が分担して抱卵・育雛を行うというものです。二重巣卵体制の場合、最初の巣では雄が抱卵と雛の世話を担当し、次の巣では雌が抱卵と育雛を行います。

普段の鳴き声は、「チュ、チュ」や「キッ、キッ」といった小さくささやくような声ですが、繁殖期になると「キュキュキュ」という、よりよく目立つ声で鳴きます。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいては、比較的絶滅の危険性が低いとされる軽度懸念（LC）に指定されています。しかし、日本国内においては、生息環境の変化などにより、いくつかの都道府県でレッドリストに指定され、保護の対象となっています。具体的には以下の通りです。

絶滅寸前または絶滅危惧種（絶滅危惧I類、CRまたはEN） - 神奈川県
危急種（絶滅危惧II類・VU） - 兵庫県
準絶滅危惧（NT） - 千葉県、静岡県、愛知県、三重県、大阪府
情報不足（DD） - 石川県

これらの指定は、地域によってはミユビシギの個体数が減少傾向にあることを示唆しており、その保全が課題となっています。

もう一度検索