ミラノ市電

ミラノ市電の概要

ミラノ市電は、イタリア・ミラノ市内を網羅する路面電車網です。軌間は1,445mmで、これはイタリア軌間とも呼ばれています。2024年現在、地下鉄やトロリーバス、路線バスとともに、ミラノ市交通公社（ATM）によって運営されています。

歴史

ミラノにおける最初の軌道交通は、1876年に開通した郊外馬車鉄道でした。しかし、現在のミラノ市電の基礎となったのは、1881年の産業博覧会に合わせて開通した市内路線です。当時は複数の事業者が存在し、市内路線は乗合馬車株式会社（SAO）が所有していました。

1893年にはドゥオーモ前からコルソ・センピオーネ間で試験的な路面電車営業が始まり、好評を博しました。1897年以降、本格的な市内電化が進められ、1901年までに完了。電化を主導したのは、ミラノに本社を置くエネルギー会社エジソン社でした。エジソン社は1895年から路面電車の運行も担当し、電化後には1910年までに900両以上の電車（2軸車）が導入され、これらは「エジソン形」と呼ばれました。

第一次世界大戦や運営権の移管を経て、1926年には大規模な系統見直しが行われました。これは、ドゥオーモ前から各方面に分散させ、混雑を緩和する目的がありました。車両面では、輸送力向上のため1927年に大型ボギー車が試作され、1928年以降には量産車500両が導入されました。これが1500形電車、通称「カレッリ」です。その後も、既存の2軸車の連接車化や新型ボギー車の導入が進められ、1940年には路線網、車両数ともに最大規模に達しました。運営組織は、1931年にミラノ市直属から「ミラノ市路面電車会社」に変わりました。

第二次世界大戦中も新型連接車が導入されましたが、1943年の空襲でミラノ市内は甚大な被害を受け、路面電車網も大きな損傷を受けました。しかし、終戦後には迅速な復旧が行われ、多数の車両が営業運転に復帰しました。

1950年代以降も新型電車が導入された一方で、モータリゼーションの進展により路面電車は渋滞に巻き込まれるようになり、定時性が失われました。さらに、地下鉄建設に伴い一部系統が廃止され、合理化のため2軸車や連接車は順次廃車されました。運行形態も合理化され、車掌業務が廃止され、集電装置がポールからパンタグラフに変更されました。

しかし、需要の高い系統も多く、混雑緩和のためボギー車を改造した3車体連接車が導入されました。1970年代には、地下鉄に代わる高規格の路面電車路線が計画され、大型の3車体連接車が製造されました。

その後も路線網は縮小しましたが、1999年に運営組織が「ミラノ市交通公社」に名称変更されて以降、路面電車の近代化が進められました。高規格の路面電車「メトロトランヴィア」の建設が始まり、2002年12月に最初の区間が開通。最新区間は2018年9月に開通しました。車両面では、2000年以降にバリアフリー対応の超低床電車が導入され、既存車両のリニューアルも行われています。

路線

2024年現在、ミラノ市交通公社はミラノ市内に複数の路面電車路線を運行しています。

現有車両

1500形：1920年代後半から導入されたボギー車で、アメリカのピーター・ウィット・カーを基にしています。現在も多くの車両が使用されています。
4600形・4700形：1950年代以降に導入された2車体連接車。4600形は発電ブレーキと圧縮空気ブレーキの両方を搭載しますが、4700形は空気ブレーキがありません。
4900形：左右非対称の前面形状が特徴の3車体連接車で、「ジャンボトラム」とも呼ばれています。
7000形：イタリア製の超低床電車「ユーロトラム」で、9車体連接車です。
7100形：イタリアのアンサルドブレーダ製の超低床電車「シリオ」の1種で、7車体連接車です。
7500形・7600形：「シリオ」のうち、全長が短い5車体連接車です。形式の違いは機器配置によるものです。
7200形：スイスのシュタッドラー・レール製の超低床電車「トラムリンク」で、両運転台式の3車体連接車です。

過去の車両

エジソン：開業から1910年まで導入された2軸車です。
試験車：「エジソン形」の後継となる標準型車両の研究のため製造された試作車です。
600形：試作車の成果を受けて導入された形式で、「エジソン形」よりも車体が大型化し、出力も向上しました。
3000形：600形の2軸付随車を改造した3車体連接車です。
4000形：600形を改造した3車体連接車で、一部は戦災復旧車です。
4100形：4000形から改造された形式です。
5000形：1930年代後半に製造された軽量ボギー車です。
4500形：5000形を基にした2車体連接車で、第二次世界大戦中に開発・製造されました。
700形：600形の戦災復旧車です。
5100形：5000形の戦災復旧車です。
2500形：ローマ市電から譲渡された軽量ボギー車です。
5200形：1950年代に製造されたボギー車です。
5300形：前面デザインを一新したボギー車です。
5400形：5300形の同型車体と発電ブレーキを有するボギー車です。
4800形：5200形・5300形・5400形の車体を用いて製造された大型の3車体連接車です。
4500形（2代目）：1500形を改造した、ミラノ市電初の部分超低床電車です。

関連項目

ミラノ・インターアーバン：ミラノと郊外を結ぶ都市間系統です。

参考資料

Neil Pulling (October 2017). “SYSTEMS FACTFILE: No.120 Milan, Italy”. Tramways & Urban Transit (LRTA) 958: 304-308.
Balt Korthals Altes (janurari 1992). “de tram in Milaan”. op de rails (Union Internationale de Presse Ferroviaire): 20-25.
橋爪智之 (2016-05-20). “徹底研究！ミラノのトラム車両”. 路面電車EX (イカロス出版) 07: 119-126.
ATM Group S.p.A. (April 2011). Company profile 2011 (PDF)
Paolo Zanin (2007). Primi tram a Milano. Nascita e sviluppo della rete tranviaria (1841-1916).

外部リンク

（イタリア語）ミラノ市交通公社の公式ページ

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