ミラン・ネディッチ

ミラン・ネディッチ（1877年9月2日 - 1946年2月4日）は、ユーゴスラビアの軍人、そしてセルビアの政治家として、激動の時代を生きました。彼は第二次世界大戦中、ドイツ占領下のセルビアにおける傀儡政権、セルビア救国政府の議長を務めました。

ネディッチはベオグラード近郊で生まれ、クラグイェヴァツの体育学校を卒業後、セルビア公国陸軍に入隊。バルカン戦争や第一次世界大戦での軍功を重ね、ユーゴスラビア王国建国時には参謀総長に任じられるなど、軍人として着実にキャリアを積み重ねました。また、1920年代には駐ソフィア、駐パリ、駐ローマ駐在武官を歴任し、国際的な経験も積んでいます。1939年8月から1940年11月までユーゴスラビア国防大臣を務めました。

1941年4月、ドイツ軍がユーゴスラビアに侵攻。当時、第3軍集団を指揮していたネディッチは、降伏という決断を下します。その後、独ソ戦が開始された後の8月29日、ドイツ軍政下でセルビア救国政府が発足すると、彼は「セルビア民族の維持」を目的として議長に就任しました。1941年9月には暗殺未遂事件も経験しましたが、1944年にヨシップ・ブロズ・チトー率いるパルチザン部隊によってユーゴスラビア全土が解放されるまで、セルビアの治安維持に尽力しました。1943年から1944年までは内務大臣も兼務しました。

ネディッチの政権は、概ねドイツ軍政の方針に沿うものでしたが、救国政府の部隊であるセルビア自衛軍の東部戦線への投入は最後まで拒否しました。また、当初は敵対していたチェトニクに対しても、チトーのパルチザンが優勢になるにつれて同盟を結び、共に戦う道を選びました。

ユーゴスラビア解放後、ネディッチはウィーンに逃亡しましたが、イギリス軍の捕虜となり、チトー政権に身柄を引き渡されました。彼は戦争犯罪人として起訴される中で獄死。目撃者のいない状況での死亡だったため、自殺説や暗殺説が囁かれましたが、いずれも確たる証拠はありません。

ネディッチは、早々と降伏し占領軍に協力したことから、長らく売国奴としての評価が定着していました。しかし、近年では、ウスタシャやナチスに迫害された数十万のセルビア人、スロベニア人、そして少数のユダヤ人を受け入れたという事実に注目が集まっています。一連の行動をセルビア民族の存続を図るためと捉え、彼の行動を再評価する動きも現れています。

彼の評価は定まってはいませんが、セルビアの歴史における複雑な人物の一人であることは間違いありません。

外部リンク:
Die serbischen Tschetniks einst und jetzt. (Anmerkungen zur Geschichte der serbischen Rechten von Max Brym)

もう一度検索