ミリスキア

ミリスキア：白亜紀前期の小型捕食者

ミリスキア( Mirischia asymmetrica)は、約1億1000万年前の前期[白亜紀]に生息していた小型の肉食恐竜です。ブラジル北東部ペルナンブコ州アラリピナ近郊のロムアルド層(旧サンタナ層)から発見されました。

発見と命名

2000年、ドイツの博物館がブラジルの化石業者から購入したチョークの小塊の中に、小型恐竜の化石が含まれていることが判明しました。2004年、この化石は新属新種 Mirischia asymmetrica として正式に記載されました。属名 Mirischia は、「素晴らしい股関節」を意味するラテン語とギリシャ語の組み合わせです。種小名 asymmetrica は、左右非対称の坐骨に由来しています。

ホロタイプと特徴

ミリスキアのホロタイプ標本(SMNK 2349 PAL)は、部分的に関節した骨格で、骨盤、脊椎、肋骨、腹肋、不完全な後肢などが含まれています。注目すべきは、化石化した腸の断片や、気嚢の痕跡と解釈される構造が保存されていることです。この個体は成長途中の亜成体であり、全長は約2.1メートルと推定されていますが、成体の大きさは不明です。

古生物学

ミリスキアは二足歩行の小型捕食者で、体重は約7キログラムと推定されています。非常に軽量な体格が特徴的です。その非対称の坐骨は、脊椎動物では珍しい特徴です。

軟部組織

腸の残骸や気嚢の痕跡が保存されていることは、ミリスキアの研究において非常に重要な発見です。気嚢の存在は、非鳥類獣脚類にも鳥類のような呼吸システムが存在する可能性を示唆しています。

分類

ミリスキアは当初、コンプソグナトゥス科に分類されていましたが、後に基盤的なティラノサウルス科の可能性も示唆されています。オルニトレステスやタニコラグレウスのように、分類が定まっていない獣脚類も存在します。

古生態学

食性

頭部化石が発見されていないものの、ミリスキアは活動的な肉食動物であったと考えられています。周囲には様々な魚類、小動物、そして大型恐竜の幼体なども生息しており、それらを捕食していた可能性があります。

他種との関係

ミリスキアは様々な捕食動物と共存していました。イリテーターなどの大型獣脚類は捕食者、タラッソドロメウスなどの大型翼竜も捕食者としてミリスキアを脅威とした可能性があります。ただし、直接的な捕食-被食関係を示す証拠は現時点ではありません。

競争相手

サンタナラプトルなどの小型獣脚類、ワニ類、翼竜などが競争相手であったと考えられています。

古環境

ロムアルド層は、熱帯から亜熱帯気候の沿岸ラグーン環境であったと推定されています。植生は比較的乏しく、乾燥に強い植物が優勢でした。この環境には、様々な翼竜、恐竜、ワニ類、カメ類、魚類などが生息していました。

ロムアルド層の動物相は、アフリカの白亜紀中期の動物相と類似点が見られ、テチス海とのつながりを示唆しています。しかし、堆積物から海洋無脊椎動物が確認されないことから、つながりは散発的だった可能性が高いとされています。化石の堆積様式については、異所的堆積ではなく、生息地での埋没であるという説が有力です。

結論

ミリスキアは、良好な保存状態の化石からその生態や分類、当時の環境が明らかになってきた、重要な前期白亜紀の小型獣脚類です。今後の研究によって、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。

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