ミリ環礁

ミリ環礁：太平洋の静寂と歴史の痕跡

ミリ環礁は、マーシャル諸島、ラタック列島に位置する環礁で、92の島々から構成されています。総面積は陸地が16平方キロメートル、ラグーンが763平方キロメートル。1999年の時点で人口は1,032人でした。この小さな環礁は、かつて日本最東端の地であり、その歴史は第二次世界大戦と深く結びついています。

日本統治時代から第二次世界大戦へ

第一次世界大戦後、マーシャル諸島はドイツの植民地から日本の委任統治領となりました。当時、ミリ環礁は「ミレ島」または「ミレー島」と呼ばれ、日本の東端の地として認識されていました。

太平洋戦争が開戦すると、ミリ環礁は日本軍にとって戦略的な要所となりました。1942年、ガダルカナル島攻防戦が激化する中、日本軍はマキン島奇襲事件を受けて、ミレ島の飛行場整備を急ぎました。同年8月には、第62警備隊派遣隊が進出し、続いて横須賀鎮守府第三特別陸戦隊が守備につきました。

その後、ソロモン諸島への増援や中部太平洋の防備強化のため、中国大陸から転用された兵力がミレ島に派遣されました。1943年6月には、第66警備隊が編成され、ミレ島の防備はさらに強化されました。同年9月には、歩兵第122連隊の一部も到着し、ミレ島の兵力は最大約5,500名に達しました。この間、滑走路の増設や各種防御施設の建設が進められました。

戦局の転換と孤立

1943年11月、アメリカ軍はガルヴァニック作戦を発動し、マキン島とタラワ島を攻略しました。これにより、日本軍はギルバート諸島への逆上陸を中止し、ミレ島を含む各島への増援部隊を派遣しました。しかし、1944年になると戦局は大きく転換。アメリカ軍は日本軍の司令部があったクェゼリン環礁を攻略し、ミリ環礁は後方からの補給路を断たれ、孤立しました。さらにトラック島空襲により、日本軍の補給拠点は壊滅的な被害を受けました。

孤立したミリ島は、アメリカ軍機動部隊の艦載機搭乗員の実戦練習の標的とされ、攻撃にさらされました。補給が途絶え、食糧不足が深刻化する中で、日本兵の多くが栄養失調となり、餓死者も多数発生しました。

終戦と復員

終戦後、ミリ環礁は1945年8月21日に降伏しました。その後の復員活動では、日本の民間船で唯一残っていた大型船舶「氷川丸」が派遣され、約2,590名の日本兵が収容され、内地に帰還しました。戦時中、ミレ島には最大で5,756名の日本兵が配置されましたが、戦死と戦病死により多くの犠牲者を出しました。生存者は約2,240名と記録されています。

現在のミリ環礁

現在、ミリ環礁はマーシャル諸島の中でも有数のダイビングスポットとして知られています。その美しい海と豊かな自然は、訪れる人々を魅了します。しかし、環礁のあちこちには旧日本軍の遺棄兵器や不発弾が残されており、過去の戦争の爪痕を今に伝えています。これらの遺棄物は、戦後処理の枠組みの中で解決済とされていますが、この島の歴史を語る上では欠かせない要素です。

ミリ環礁は、第二次世界大戦の悲劇と現在の平和が共存する場所です。過去の出来事を忘れることなく、平和の尊さを後世に伝えていくことが重要です。

参考資料

防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 中部太平洋方面海軍作戦＜2＞ 昭和十七年六月以降』
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 中國方面海軍作戦(2) 昭和十三年四月以降』
* 読売新聞大阪本社社会部『遥かなるミレー』

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