ミルザ・デリバシッチ

ミルザ・デリバシッチ：ボスニアが生んだバスケットボールの英雄

ミルザ・デリバシッチ（Мирза Делибашић、1954年1月9日 - 2001年12月8日）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ（旧ユーゴスラビア）出身のプロバスケットボール選手であり、引退後は指導者としても活躍しました。その輝かしいキャリアは、ボスニア・ヘルツェゴビナのみならず、ヨーロッパ全体のバスケットボール界に大きな足跡を残しました。

生い立ちとバスケットボールとの出会い

ミルザは、ボスニア・ヘルツェゴビナ社会主義共和国（現ボスニア・ヘルツェゴビナ）のトゥズラで生まれました。幼少期はテニスに打ち込み、その才能を発揮していましたが、14歳の時にバスケットボールに転向しました。この決断が、後に彼をヨーロッパバスケットボール界のスターへと押し上げることになります。

クラブでの活躍

15歳で地元のバスケットボールクラブ、KKスロボダ・ディタでデビューを果たした後、1971年にKKボスナ・ロイヤルと契約。このクラブで、ミルザは「キンジェ」という愛称で親しまれ、その才能を開花させます。1979年には、KKボスナをユーロリーグ優勝に導き、その名をヨーロッパ中に轟かせました。

KKボスナ退団後は、スペインのレアル・マドリード・バロンセストに移籍。ドラジェン・ペトロヴィッチやアルヴィーダス・サボニスといった名選手たちと共にプレーし、スペインリーグ優勝も経験しました。彼のプレースタイルは、正確なシュートと創造性あふれるプレーで観客を魅了し、ヨーロッパ屈指のシューターとして高く評価されました。

ユーゴスラビア代表としても活躍したドラジェン・ダリパギッチとは、レアル・マドリードでもチームメイトでした。1983年のユーロリーグ、KKチボナ戦では、デリバシッチが26点、ダリパギッチが33点を獲得。2on1の速攻を武器に、観客を熱狂させました。特に、デリバシッチがパスを出すと見せかけて背後を通してパスを出すプレーや、ブザービーターでの両手ダンクは、観客を魅了し、チボナのファンからもスタンディングオベーションが送られるほどでした。

突然の引退

1983年、29歳という若さで、デリバシッチはイタリアリーグのジュベカゼルタと契約。しかし、シーズン前のトレーニング中に脳出血を発症し、現役引退を余儀なくされました。ベオグラードの病院での懸命な治療により一命は取り留めたものの、バスケットボール選手としての復帰は叶いませんでした。

代表チームでの輝かしい実績

クラブでの活躍と並行して、ミルザ・デリバシッチはユーゴスラビア代表としても輝かしい実績を残しました。1980年モスクワオリンピックでの金メダル、2度のユーロバスケット優勝（1975年、1977年）、1978年バスケットボール世界選手権での金メダルなど、主要な国際大会で数々のタイトルを獲得し、ユーゴスラビア代表の黄金時代を築き上げました。

引退後と晩年

引退後は指導者として、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表を率いてユーロバスケット1993に出場。サラエボ包囲という困難な状況下で、チームを8位に導きました。

私生活では、2度の結婚を経験し、2人の息子を授かりました。しかし、晩年はアルコール依存症に苦しみ、2001年、47歳という若さでサラエボで死去しました。彼の葬儀には数千人が参列し、その死を悼みました。

遺産

ミルザ・デリバシッチの功績は、ボスニア・ヘルツェゴビナのスポーツ史に深く刻まれています。2007年にはFIBA殿堂入りを果たし、2008年にはユーロリーグ史上最も偉大な貢献者50人にも選出されました。また、彼の栄誉を称え、KKボスナの本拠地はミルザ・デリバシッチ・ホールと改名されました。彼は、ボスニア・ヘルツェゴビナの人々にとって、バスケットボールの英雄として永遠に語り継がれるでしょう。

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