ミン・アウン・フライン

ミン・アウン・フラインの人物像

ミン・アウン・フライン（Min Aung Hlaing）は、1956年7月3日生まれのミャンマーの軍人であり、政治家です。現在の階級は上級大将で、ミャンマー国軍の最高司令官を務めています。また、2021年の軍事クーデター以降は、国家行政評議会議長として事実上の最高指導者の地位にあります。さらに、2021年8月からは暫定首相も兼任しています。2024年7月22日からは大統領代行も兼任しています。

生い立ちと軍歴

ミン・アウン・フラインは、タニンダーリ地方域のダウェイ出身で、建設省技師の息子として生まれました。1972年にラタ第1基礎教育高等学校を卒業後、ヤンゴン芸術工科大学法学部に入学しましたが、1974年に軍人の道を選び、国軍士官学校に入学しました。

士官学校時代は内向的な性格のため、同期からは避けられていたと伝えられています。卒業後は、駐モン州部隊長を経て、2002年に三角軍区司令官に昇進。ワ州連合軍やミャンマー民族民主同盟軍との交渉で中心的な役割を果たしました。2007年のミャンマー反政府デモでは、鎮圧に尽力しました。

2008年には、カレンニー族やシャン州での反乱対策を目的とする第2特別作戦室（BSO-2）室長に就任しました。

国軍総司令官として

2009年には、コーカンでのミャンマー民族民主同盟軍との紛争を指揮し、その功績から2010年6月に陸海空軍統合参謀長に抜擢されました。さらに、2011年3月にはタン・シュエの後任として国軍総司令官に指名されました。

ミャンマーは民政に移管したものの、憲法上、国軍総司令官は大統領に次ぐ大きな政治的権限を持っており、テイン・セイン大統領との距離も近かったミン・アウン・フラインは、ミャンマー情勢のキーパーソンとみなされていました。

民主化には基本的に前向きな姿勢を示しつつも、国内の治安維持と秩序を重視し、「政党政治への偏重は国を不安定にする」と主張。「規律ある民主国家」のためには、軍の影響力を維持する方針を採っています。憲法改正を含む早急な民主化の進展には消極的です。しかし、2015年の総選挙では、NLDが勝利した場合でも選挙結果を尊重すると表明しました。

一方で、イラワジなどの反政府系メディアからは、少数民族武装勢力や反政府活動の鎮圧に携わった経歴や、中国からの軍事支援を受けていることが批判されています。

ロヒンギャ問題

ミン・アウン・フラインは、ミャンマー政府と同様に、ロヒンギャの存在を認めておらず、バングラデシュからの不法移民、「ベンガル人」と認識しています。2017年には、ロヒンギャの武装勢力「アラカン・ロヒンギャ救世軍」（ARSA）の「掃討作戦」を指揮し、「ラカイン州で1942年の危機を再び起こさせはしない」と主張しました。これは、太平洋戦争中の「ベンガル人」がイギリスに味方したことを指しています。

国際連合によると、2017年初めにはミャンマー国内のロヒンギャは約80万人と推計されていましたが、「掃討作戦」によって、多くのロヒンギャが家を追われ、バングラデシュに逃れました。このロヒンギャ迫害を理由に、アメリカはミン・アウン・フラインを経済制裁の対象としました。

2021年ミャンマークーデター

2021年2月1日、2020年11月の総選挙で国軍系の政党USDPが、アウンサンスーチー率いるNLDに大敗したことを受け、ミン・アウン・フラインは、選挙の不正を理由にミャンマー国軍による政権奪取を主導し、三権を掌握しました。これにより、彼はミャンマーの事実上の最高指導者となりました。同年8月1日には、暫定政権の首相に就任し、2020年の総選挙の再選挙を2023年8月までに実施することを表明しました。

2024年7月22日には、ミンスエ大統領代行が末梢神経障害の治療中に職務を委任し、大統領代行も兼任することになりました。

2024年11月27日、国際刑事裁判所の主任検察官は、ロヒンギャ迫害を理由に人道に対する罪の疑いでミン・アウン・フラインの逮捕状を請求したと発表しました。

他国との関係

クーデター以前は、欧米諸国との関係修復に努め、ISILへの脅威に対して国際的協調の姿勢を示していました。タイ王国の要人とは良好な関係を築き、非同盟中立的・全方位外交の姿勢を示しています。また、日本との関係も重視しており、麻生太郎副総理や笹川陽平日本財団会長との会談や、公式訪日も行っています。

人柄と特徴

ミン・アウン・フラインは、タイの軍人・元首相プレーム・ティンスーラーノンを尊敬しており、父のように慕っていると述べています。

小柄で丸い縁なし眼鏡をかけていることが多く、軍の司令官というよりは事務員のような風貌です。ロイターの報道によると、Facebookを愛用し、仏教寺院への寄付を重ねるなど、政治家のような振る舞いを意識していたとされています。

栄典とサイドビジネス

ミン・アウン・フラインは、勲一等タイ王冠勲章を受章しています。また、ミャンマー国軍系企業グループ「ミャンマー経済ホールディングス（MEHL）」の大株主であり、多額の配当を得ていたとされています。

年譜

1972年3月 - ヤンゴン芸術工科大学法学部
1974年1月 - 国軍士官学校入学、教育班軍曹
1977年12月 - 少尉任官
2002年 - 三角軍区司令官
2008年6月 - 第2特別作戦室長
2008/2009 - 少将
2009年末 - 中将
2011年始 - 大将
2011年3月30日 - 国軍総司令官
2012年4月3日 - 次級大将
2013年3月 - 上級大将
2021年2月1日 - ミャンマーの事実上の最高指導者
2021年2月2日 - 国家行政評議会議長
2021年8月1日 - 暫定首相

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