ムスカリン

ムスカリンとは

ムスカリン（muscarine）は、特定のキノコから抽出されるアルカロイドで、主にアセタケ類やカヤタケ類に含まれます。この物質は1869年にベニテングタケから初めて単離され、その際の含有量はごく微量、約0.00025%から0.0003%と非常に少ないものでした。ムスカリンは、副交感神経系への影響が強いことで知られています。

ムスカリンの作用

ムスカリンは、体内の副交感神経に刺激を与えることで、さまざまな生理的反応を引き起こします。この作用には、涙や唾液の分泌の増加、発汗、そして重篤な場合には痙攣や死に至ることもあります。特に注目すべきは、ムスカリンが血液脳関門を通過できないため、直接的に中枢神経系には影響を与えないことです。代わりに、ムスカリンは副交感神経作用薬として機能し、特定のアセチルコリン受容体に結合することで神経伝達物質アセチルコリンの作用を模倣します。

中毒症状とその経過

ムスカリン中毒は、キノコを食べてから約15分から30分後に現れるのが特徴です。最初の症状としては、涙や唾液の分泌が過剰になることや、発汗が見られます。より多くのムスカリンを摂取した場合には、その後、腹痛や激しい吐き気、下痢が続くことがあります。また、瞳孔が縮小（縮瞳）し、呼吸困難になることもあります。これらの症状は、通常は2時間以内に収まりますが、稀に心臓発作や呼吸不全を引き起こし、ごくまれに死亡するケースもあります。

解毒方法

ムスカリン中毒に対する解毒剤としてはアトロピンが使用されます。この薬剤は、副交感神経の過剰な刺激を緩和する効果があり、適切に使用されれば、症状の軽減が期待できます。

ムスカリンを含むキノコ

ムスカリンを含むキノコには、いくつかの種類があります。特に以下のキノコが挙げられます：

• - テングタケ属（テングタケ科）：ベニテングタケやテングタケなど微量含まれていますが、主な毒成分はイボテン酸です。
• - アセタケ属（フウセンタケ科）：オオキヌハダトマヤタケやシラゲアセタケなど多くのムスカリンを含み、毒性が強いです。
• - カヤタケ属（キシメジ科）：カヤタケやシロヒメカヤタケ、コカブイヌシメジがこのカテゴリに含まれ、主に欧米で多く見られます。
• - イッポンシメジ科：イッポンシメジやクサウラベニタケは日本で中毒が多いキノコです。
• - ニガイグチ属（イグチ科）：ニガイグチも主要な毒成分として知られています。

これらのキノコにはムスカリンが含まれていますので、摂取には十分に注意が必要です。特に、見慣れないキノコを食べる際は、その種類や安全性を確認することが重要です。

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