ムラサキセンブリ

ムラサキセンブリ (Swertia pseudochinensis)

ムラサキセンブリはリンドウ科に属する植物で、特に目を引く紫色の花を咲かせることが特徴です。地生しているこの植物は、センブリに非常に似ていますが、紫色の花を持っているため、和名として「紫センブリ」と呼ばれています。

特徴

この植物は直立した茎をもち、2年生の草本です。根は分枝があり短く、黄色をしています。茎は断面が四角形で、通常高さは15〜30cmに成長しますが、環境によっては50〜70cmにも達することがあります。場合によっては1mに達することもあります。茎の表面は黒紫色を呈し、上部では枝分かれが見られます。

葉は独特の形状をしており、ほとんど柄がなく、披針形をしています。葉は対生で、やや密生してつくため、その姿は非常に美しいです。葉の大きさは長さ2〜4cmです。

花は主に10月に咲き、茎の先端や葉の腋から出現します。花序は円錐状で、上から順に開花していきます。花の色は青紫で、花冠の裂片は幅広く、長さは1〜1.5cm程度。白地に濃紫色の線が入っており、基部には長い毛で覆われた蜜腺が存在します。雄しべは5本あり、花冠よりも短く、葯は暗紫色をしています。

分布

ムラサキセンブリは日本の本州、特に関東以西の地域から四国や九州に分布しています。また、朝鮮や中国の東北部、アムール地域にも生息しています。日本においては、特に海岸近くやススキ草原でよく見られる植物です。

生育環境

この植物は、特に蛇紋岩地域に多く見られます。蛇紋岩地域は通常、栄養不足で植物にとって生育には難しい環境ですが、ムラサキセンブリはこのような条件でも力強く成長していくことができます。栄養分の少ない地質でも、時として背丈は1mに達する例も報告されています。

分類

本種はセンブリ (S. japonica) によく似ていますが、一般に本種の方が大きく、紫色の発色が強いのが特徴です。細かい部分では、茎や萼裂片に見られる隆起や蜜腺の毛の波状隆起などで区別が可能です。また、イヌセンブリ (S. diluta) も存在し、これはセンブリと類似点が多いですが、葉の形状は倒卵形をしています。日本には同じ属の他の種も見られますが、それらは通常、より広い葉を持っています。

利用

本種の根には苦味があり、センブリの代用品として用いられることがあります。ただし、現在ではこの植物の方が稀少であり、医薬品の標準には認められていないため、実際の利用は難しい状況です。

保護の現状

環境省のレッドデータブックでは、ムラサキセンブリは準絶滅危惧種とされています。また、県単位では多くの場所で絶滅危惧IまたはIIに指定されており、東京都、埼玉県、奈良県ではその絶滅が確認されています。

出典

• - 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本III 合弁花類』(1981) 平凡社
• - 牧野富太郎『牧野 新日本植物圖鑑』(1961) 図鑑の北隆館
• - 矢原徹一他監修『レッドデータプランツ 増補改訂新版』(2015) 山と渓谷社
• - 邑田仁「センブリ」：『朝日百科 植物の世界 3』(1997) 朝日新聞社：p.50-53

外部リンク

• - ムラサキセンブリ

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