メキシコトビマメ

メキシコトビマメとは

メキシコトビマメは、トウダイグサ科の植物である Sebastiania palmeri あるいは Sebastiania pavoniana の種子で、内部にハマキガ科の蛾 Laspeyresia saltitans の幼虫が寄生していることで、まるで生きているかのように動き回る不思議な豆です。この動きから、メキシコでは「brincador（這い回るもの、跳ねるもの）」と呼ばれています。

特徴

外見は直径7～10mmほどの黄褐色から茶色の小さな豆で、内部には蛾の卵から孵化した幼虫が住み着いています。この幼虫の動きが豆を跳ねさせる原因です。豆自体は、落葉性の潅木である Sebastiania 属の植物の種子で、この潅木自体も英語では「Jumping bean」と呼ばれます。また、寄生する蛾も「jumping bean moth」と呼ばれています。

生活環

Sebastiania pavoniana は、岩場の斜面や峡谷に生える潅木で、冬には鮮やかな紅葉を見せます。春から夏にかけて花を咲かせ、その雌花の子房に蛾が産卵します。

孵化した幼虫は種子内部を食い荒らし、空洞にします。幼虫は糸を分泌して自身を固定し、数年間休眠状態で過ごします。適切な湿度環境下で、幼虫は蛹になり、春になると羽化します。羽化した蛾は、豆の表面に開いた出口から脱出し、数日の寿命を終えます。豆が跳ね回るのは、乾燥から身を守るための幼虫の生存戦略によるものです。太陽光は豆を動かしますが、長時間直射日光に晒されると、豆が乾燥し、幼虫は死んでしまいます。

玩具としてのメキシコトビマメ

メキシコトビマメは、英語圏では「Mexican jumping bean」として知られ、かつては玩具として人気がありました。手で温めると、内部の幼虫が痙攣し、豆が動き回ります。これは厳密には「ジャンプ」というよりは、動き回るといった表現が適切でしょう。豆が茶色に変色し始めたら、幼虫が死にかけているサインであり、振ってカラカラと音がするようであれば、完全に死んでいる状態です。

1960年代には、この豆を模したプラスチック製の玩具も販売されました。これは薬のカプセルのような形で、内部に金属球が入っており、傾けると球が動き、カプセルが痙攣するように動く仕組みでした。

日本では植物防疫法により、この種子の輸入は禁止されています。

手入れと保管

豆の乾燥を防ぐためには、月に1～2回、塩素を含まない水に4～5時間浸す必要があります。水道水に含まれる塩素は幼虫を殺してしまうため、使用は避けるべきです。塩素を取り除くには、蓋のないコップに水道水を入れ、6時間ほど放置する方法もあります。霧吹き程度の水分補給では効果がありません。豆は冷暗所で保管し、冷凍保存は避けるべきです。

原産地

メキシコトビマメに寄生する蛾 Laspeyresia saltitans は、メキシコのソノラ州、シナロア州、チワワ州が原産地です。特にソノラ州のアラモスは、「メキシコトビマメの原産地」と主張しています。蛾は、宿主となる Sebastiania pavoniana が生息する地域に限定して生息し、春になると、前年に卵が産み付けられた豆から羽化し、次の世代の宿主に産卵します。

ポップカルチャー

メキシコトビマメは、1930年代から1950年代にかけて、カートゥーン作品でギャグとしてよく使われました。劇中では、キャラクターが豆を食べたことで、体が意に反して跳ね回るという描写が見られます。また、日本の人形劇『ひょっこりひょうたん島』にも登場しています。

参考情報

メキシコトビマメの説明（英語）
メキシコトビマメの生活環（英語）

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