メキシコ地震 (1985年)

メキシコ地震 (1985年)

概要
1985年9月19日、メキシコで発生した地震は、震源地がバルサス川河口沖の太平洋で、モーメントマグニチュードは8.0という非常に強力なものでした。この地震は、特にメキシコシティにおいて深刻な影響を及ぼしました。震源から約300km離れた場所でも強い揺れが感じられ、最大で3〜4分に及ぶ揺れが記録されました。

メキシコの太平洋沿岸では、ココスプレートが北アメリカプレートに沈み込み、一見静穏だったミチョアカン州沖は“地震空白域”と見なされていました。しかし、1985年以前の20世紀には、周辺で42回のマグニチュード7.0以上の地震が発生していました。

この地震は、主に4つの主要な地震で構成され、1985年5月28日には前震（マグニチュード5.2）があり、続いて本震が9月19日に発生しました。また、翌日の9月20日にはマグニチュード7.5の余震が続き、1986年4月30日にも再び余震が発生しました。

メキシコシティの脆弱な地盤
この地震が特に深刻な影響を及ぼしたのは、メキシコシティの地盤特性に起因しています。メキシコシティは、テスココ湖を埋め立てて建設された都市で、地盤には軟らかい水分を多く含んだ層が存在します。また、湖底は固い地盤となっており、この地盤による地震波の反射と増幅が長周期地震動を引き起こしました。

この地震により、特に約2.5秒の周期と一致する地震波がメキシコシティで共鳴し、液状化現象を引き起こしました。その結果、公共施設や高層ビルにおいて多くがパンケーキ崩壊を起こし、最も高い全壊率を示したのは14階建てのビルでした。このビルは、固有周期が1.4秒であり、地震の長周期動に最も影響を受けやすい構造とされました。

また、この地震による被害の原因とされたのは建築基準の甘さでしたが、長周期振動の影響が大きかったことが後に明らかになりました。

被害状況
この地震による被害は甚大で、政府の公式発表によれば、死亡者数は約1万人に達しました。倒壊した建物は約3万棟、半壊したものは約6万8千棟に上りました。メキシコシティにおける地震の影響は、その後の建築基準や災害対策に大きな影響を与えました。

関連事項
メキシコ地震の32年後、2017年の同日に再度M7.1の地震が発生し、更にその5年後にも同様の規模の地震が起こるなど、この地域は引き続き地震の危険性が高いことが示されています。

このように、1985年のメキシコ地震は、地震学的な観点からも、建築技術の進展に多大な影響を与えた重要な出来事であったと言えます。

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