メタクリル酸メチル

メタクリル酸メチル（MMA）

メタクリル酸メチル（methyl methacrylate、略称MMA）は、有機化合物の一種です。メタクリル酸のメチルエステルであり、主に透明性が高いプラスチックとして知られるメタクリル酸メチル樹脂（PMMA、アクリル[[樹脂]]）の製造に用いられる重要な原料モノマーです。消防法では危険物第4類第1石油類に分類され、取り扱いには注意が必要です。

製造方法

世界における年間生産量は約210万トンにも及ぶメタクリル酸メチルは、主に2つの方法で工業生産されています。

アセトンシアンヒドリン法（ACH法）

伝統的な製造法として、アセトンとシアン化水素（青酸）を原料とするACH法が挙げられます。この方法では、まずアセトンとシアン化水素からアセトンシアンヒドリンという中間体を生成します。その後、硫酸を用いた反応を経て、メタクリル酸メチルと硫酸アンモニウムが得られます。硫酸アンモニウムは副産物として生成します。

反応式は以下の通りです。

(CH3)2C=O + HCN → (CH3)2C(OH)CN
(CH3)2C(OH)CN + H2SO4 → CH3C(=CH2)C(=O)NH2・H2SO4
2CH3C(=CH2)C(=O)NH2・H2SO4 + 2CH3OH → 2CH3C(=CH2)COOCH3 + (NH4)2SO4 + H2SO4

新しい製造法

近年では、エチレン、メタノール、一酸化炭素を原料とする新しい製造法も開発されています。この方法では、まずエチレン、メタノール、一酸化炭素からプロピオン酸メチルを合成します。次に、プロピオン酸メチルとホルムアルデヒドを脱水縮合させることで、メタクリル酸メチルが得られます。

反応式は以下の通りです。

CH2=CH2 + CH3OH + CO → CH3CH2COOCH3
CH3CH2COOCH3 + HCHO → CH3C(=CH2)COOCH3 + H2O

主要製造メーカー

日本におけるメタクリル酸メチルの主要製造メーカーには、三菱ケミカル、クラレ、旭化成、三井[[化学]]、三菱ガス[[化学]]、住友[[化学]]などが挙げられます。これらの企業は、多様な産業分野のニーズに応えるべく、安定的な供給に努めています。

用途

メタクリル酸メチルは、その高い反応性から様々なポリマー合成の原料として幅広く利用されています。主な用途として、以下のものが挙げられます。

メタクリル酸メチル樹脂（PMMA）

メタクリル酸メチルを重合させたPMMAは、アクリル[[樹脂]]の代表的な製品です。高い透明性と光沢を有し、ガラスの代替として、ディスプレイや光学レンズ、建築材料などに広く用いられています。その耐衝撃性も高く評価されています。

メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂（MBS樹脂）

メタクリル酸メチル、ブタジエン、スチレンの3成分を共重合させたMBS樹脂は、ポリ塩化ビニル（PVC）の改質剤として使用され、PVCの耐衝撃性、加工性を向上させる役割を担っています。

スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合樹脂（SMM樹脂）

SMM樹脂は、PMMAの耐熱性を向上させる改質剤として用いられます。PMMAに添加することで、特性を損なうことなく耐熱性を高めることができ、自動車のメーターパネル、光学フィルム、発光ダイオード用レンズなど、高温環境下で使用される製品に利用されています。

まとめ

メタクリル酸メチルは、現代社会の様々な製品に欠かせない重要な化学物質です。その製造、用途、安全性の確保は、今後も重要な課題であり続けるでしょう。

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