メナンドロス (東ローマ帝国の歴史家)

メナンドロス・プロテクトルの生涯と業績

メナンドロス・プロテクトル（Μένανδρος Προτήκτωρ/Προτέκτωρ）は、古代ギリシャの歴史家であり、ビザンツ帝国初期の皇帝マウリキウスの時代に活動した人物です。彼の生涯についての記録は限られていますが、彼が皇帝の近衛兵であったことや、歴史を著すことによって重要な役割を果たしていたことは知られています。また、彼には詩人としての顔もあり、エピグラムとして知られる短い詩を残しています。

メナンドロスの経歴は謎に包まれていますが、彼が法廷での経験を持ち、古典的な教育を受けていたことがわかっています。彼は敬虔なキリスト教徒であったとされていますが、若い頃には自由奔放な生活を楽しんでいたとされます。彼は、当時のコンスタンティノープルで文化的な活動に従事し、その後は後進の育成にも努めたと考えられます。

メナンドロスの『歴史』執筆

メナンドロスは、皇帝マウリキウスの治世（582年 - 602年）に彼の前任者アガティアスの業績を引き継ぎ、558年から582年にかけて起こった出来事をテーマにした『歴史』を執筆しました。彼の著作の正確な名称や巻数は伝えられていませんが、8巻から10巻の範囲だったと推測されています。

特に注目すべきは、メナンドロスがマウリキウス在位中に歴史を書くという点です。これは一般的には異例であり、皇帝を題材にすることは古代末期の歴史家にとって珍しいことでした。しかし、皇帝自身がメナンドロスが歴史を編纂することを奨励していたと言われ、メナンドロスの工作は珍重されていたことが伺えます。

残された断片は、『スーダ辞典』や『Excerpta de sententiis』、また『Excerpta de legationibus』に収録されていますが、これらの資料に依存しなければなりません。特に、彼の記述には、当時の東ローマ帝国の外交活動についての貴重な情報が含まれており、ユスティニアヌス1世とサーサーン朝との間に締結された平和条約の詳細が引用されている箇所もあります。

メナンドロスの歴史は、570年頃の東ローマ帝国における外交関係についての貴重な資料を提供しており、突厥との関係にも触れています。彼の独自の視点により、資料に基づいた主観的な記述が多く見られ、特定の歴史的事実はアーカイブや過去の歴史家の記述に依存していることが理解できます。

古典的伝統との関連

メナンドロスの作品は、古代ギリシャの伝統を引き継ぐものであり、彼のスタイルは資料を忠実に引用することを特徴としています。彼が書き残した内容には、東方の出来事が中心に据えられていますが、これは後に編集された過程においての選択である可能性もあります。彼の記録の中には、「蛮族」という言葉の使用や、特定の知識に基づく記述には疑問が残る点も見受けられます。

メナンドロスは630年頃、テオフィラクトス・シモカテスにその職を引き継ぎ、古典的歴史家としての最後の人物となりました。彼の記録は、古代ギリシャの後期の歴史を理解する上で重要な役割を果たし、後世に大きな影響を及ぼしました。

参考文献

メナンドロスの著作に関しては、Roger C. Blockleyによる英語訳やErnst Doblhoferのドイツ語訳があり、詳細な解説が掲載されています。また、BaldwinやBrodkaを含む多くの研究者がその業績について分析しています。

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