メヌア

メヌア王：ウラルトゥ王国を大国へ導いた王

メヌアは、紀元前9世紀にウラルトゥ王国を統治した王であり、その治世（紀元前810年頃 - 紀元前786年頃）において、王国をアッシリア帝国と並ぶオリエントの強国へと発展させました。父であるイシュプイニ王の跡を継ぎ、共同統治者として10年間政治に関わった後、王位を継承しました。

軍事遠征と領土拡大

メヌア王は、即位後も積極的な軍事遠征を展開しました。宿敵であるアッシリア帝国との対立を深める一方で、父王の時代から続いていたマンナエ人に対する遠征を継続。西方では、小国に分裂していた後期ヒッタイト諸国を攻め、南方ではウルミア湖畔までを征服しました。さらに北へはアラス川にまで勢力を拡大し、メシュタに宮殿を建設しました。これらの業績は、タシテペ碑文や、ヴァンで教会建築に転用された石碑に記録されています。

これらの遠征の結果、ウラルトゥ王国の領域はアラス川からユーフラテス川上流域にまで広がりました。ウラルトゥ王国がアッシリア帝国と異なり、鉄鉱山や良質な馬に恵まれていたことが、領土拡大の背景にあったと考えられています。特にユーフラテス川上流域を支配下に置いたことは、アッシリア帝国にとって、鉄や馬の主要な供給源であるアナトリア高原との連絡路を断つことを意味し、対アッシリア戦略上重要な意味を持っていました。

建築王としての業績

メヌア王は、軍事的な才能だけでなく、建築家としても優れた手腕を発揮しました。アララト山の近くに新たな都市メヌアヒニリを建設しましたが、首都は引き続きトゥシュパ（現在のヴァン）に置かれました。また、高原地帯での農地を拡大するために、用水路やダムなどの灌漑施設の建設を積極的に推進しました。これらの灌漑施設の中には、現代でも使用されているものがあります。

特に有名なのは、首都トゥシュパに新鮮な水を供給するために建設された全長70kmに及ぶ水道です。この水道は、ホシャブ川の谷を渡るために、高さ15mにもなる巨大な水道橋も備えていました。中世アルメニアの歴史家によって語り継がれるバビロニアの女王セミラミスの事績は、このメヌア王の業績が元になっているという説もあります。実際に、ヴァン地方ではウラルトゥ王国時代に建設された水路が「セミラミスの水路」と呼ばれていました。

後継者とウラルトゥ王国の未来

メヌア王の死後、息子のアルギシュティ1世が王位を継承し、ウラルトゥ王国の拡大政策を引き継ぎました。メヌア王の時代に築かれた強固な基盤の上に、アルギシュティ1世はさらなる領土拡大と国力の増強に努めました。

メヌア王は、軍事的な成功と建築事業を通じて、ウラルトゥ王国をオリエントの主要な勢力へと押し上げました。彼の治世は、ウラルトゥ王国の最盛期を築き、後世に大きな影響を与えた時代として記憶されています。



参考文献
Пиотровский Б. Б. Ванское царство (Урарту), Издательство Восточной литературы, Москва, 1959
（邦訳）『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』（ボリス・ボリソヴィッチ・ピオトロフスキー著　加藤九祚訳　岩波書店） ISBN 9784000001601 (4000001604)
Меликишвили Г. А. Урартские клинообразные надписи, Издательство АН СССР, Москва, 1960

関連外部リンク
タシテペ碑文の写真

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