メノ・シモンズ

メノ・シモンズ：宗教改革期の指導者

メノ・シモンズ (1496年 - 1561年) は、16世紀の宗教改革期に活躍したオランダ出身のアナバプテスト指導者です。カトリック教会の司祭として叙階されたのち、聖書の研究を通して幼児洗礼の聖書的根拠に疑問を抱き、アナバプテストの信仰へと転向しました。彼の生涯と、メノナイトというキリスト教教派への影響について見ていきましょう。

激動の時代と司祭への道

シモンズは、15世紀から16世紀にかけて戦争によって荒廃したフリースラント地方で生まれました。幼少期や両親についてはほとんど知られていませんが、貧しい農民の家庭に生まれたため、彼の初期教育は聖職者になるためのみに限定されていたようです。20代前半の1524年、ユトレヒトでカトリック司祭として叙階され、故郷の村の司祭となりました。

聖書の探求と信仰の転換

司祭としての職務に従事する中、1526年から1527年にかけて、シモンズは化体説の教義に疑問を抱き始めます。聖書研究に没頭するうちに、彼は福音的人道主義の立場に立つようになりました。聖書を深く探求する過程で、幼児洗礼の聖書的根拠を見出せず、この問題について教父の著作やマルティン・ルター、ハインリヒ・ブリンガーらの著作を研究しました。そして、信仰に基づく成人洗礼（信仰者のバプテスマ）の重要性を確信するに至ります。

1535年、彼の兄弟がアナバプテストとして殺害された事件が、シモンズに大きな精神的危機をもたらしました。この出来事が彼の信仰を揺るぎないものにしたと同時に、カトリック教会との決別を促したと考えられます。1536年1月、彼はカトリック教会と聖職を放棄し、アナバプテストの信仰に転向しました。洗礼を受けた正確な日付は不明ですが、1536年10月までにはアナバプテストとして広く知られるようになりました。

アナバプテスト運動への貢献

シモンズはアナバプテスト運動に多大な貢献を果たしました。彼は、迫害の危険がある中でも、アナバプテストの信仰を維持し、その教えを広めることに尽力しました。彼の活動は、単なる信仰の維持にとどまらず、根本的な宗教改革を確立し促進させるものでした。バプテストの歴史家ウィリアム・エステップは、バプテストの歴史を「メノ・シモンズ以前」「メノ・シモンズの下」「メノ・シモンズ後」の3期に分けており、彼の影響力の大きさを示しています。

私生活とその後

シモンズはゲルトルードという女性と結婚し、2人の娘と1人の息子をもうけました。1561年1月31日、ホルシュタインで亡くなり、庭に埋葬されました。

メノナイトへの影響

「メノナイト」という名称は、オランダのアナバプテストを指す言葉として使われ始め、シモンズの教えに基づいた教派として現在まで続いています。彼の思想と行動は、現代のメノナイト教会にも大きな影響を与え続けており、その信仰と平和主義的な姿勢は、世界各地で高く評価されています。彼の生涯は、信仰の探求、迫害に屈しない信念、そして平和への献身の物語として、現代においても多くの示唆を与えてくれます。

もう一度検索