メリケンガヤツリ

メリケンガヤツリ

メリケンガヤツリ（学名: Cyperus eragrostis）は、カヤツリグサ科に属する比較的大型の植物です。原産地は北アメリカで、世界各地に帰化植物として分布を広げています。特に湿地を好んで生育し、水辺で大きな株を形成する姿がよく見られます。

形態

メリケンガヤツリは、全体的に濃い緑色で、みずみずしい印象を与える植物です。多数の葉をつけ、大きな株立ちを形成しますが、匍匐茎は持ちません。

根元からは多数の根出葉をつけます。根出葉のうち、根元に近いものは葉身が発達せず、赤みを帯びた鞘状になります。葉は長く、100cm程度まで成長することもあります。葉はやや厚みがあり、柔らかく、緑色でつやがあります。

花茎は6月頃から伸び始め、大きいものでは100cmに達します。花茎の断面は鈍い三角形で、やや柔軟性があります。花期は散発的に秋まで続き、花茎の先端に単一の花序をつけます。花序の基部には、よく発達した葉身を持つ苞が5～6枚あります。特に長い苞は50cmを超えることもあります。

花序は多数の小穂が頭状に集まった形状をしています。小穂は長さ5～15mmで、長楕円形からやや卵形に近く、左右に扁平です。全体的に緑色をしています。鱗片は二つ折りになっており、卵形から卵状披針形をしています。色は緑色から黄色、または白っぽく、側面はやや半透明です。特に基部近くでは、両列の鱗片の間から主軸が見えます。花は一本の雄しべと雌しべからなり、柱頭は三裂しています。果実は長楕円形で三稜形、灰黒色で長さ1.5mm程度です。

類似種

1m程度に成長するカヤツリグサ類の中には、シチトウのように根出葉が退化するものが多いです。ミズガヤツリなどでは必ず根出葉が見られますが、メリケンガヤツリほどよく発達するものは多くありません。また、小穂が緑色で、褐色に染まることが少ない点も特徴的です。大型のカヤツリグサ類の多くは褐色に色づくため、識別点となります。

楕円形の小穂が頭状に集まる点では、イガガヤツリやカワラスガナも似ています。小型の個体は似て見えることもありますが、これらの種は鱗片が赤っぽく着色します。小穂が緑色で頭状に集まるものとしては、アオガヤツリとその近縁種が挙げられますが、これらはさらに小型で、せいぜい20cm程度にしかなりません。

生態

メリケンガヤツリは、日当たりの良い湿地に生育します。緩やかな河川や用水路の水際などでよく見られます。水田で見かけることはほとんどありません。特に水に浸かったような環境を好み、根元が水に浸かっていることも多いです。不安定な環境では、大株にならずに一年草のような姿で穂をつけることもあります。

分布

メリケンガヤツリは、南アメリカから北アメリカ西部が原産です。現在では、南ヨーロッパ、南アフリカ、ニュージーランドなどにも帰化しています。日本には、第二次世界大戦後に沖縄に侵入し、本土では1959年に四日市市で初めて記録されました。当初はいくつかの地域に点在していましたが、1990年代から急速に分布を広げました。2003年の記録では、本州（関東以西）、四国、九州、琉球列島に分布しています。

人間との関わり

現在では、メリケンガヤツリは各地で普通に見られますが、水路を塞ぐほど異常に増殖することはありません。


参考文献

谷脇勝弘、『カヤツリグサ科入門図鑑』、(2007)、全国農村教育教会
長田武正、『原色日本帰化植物図鑑』、(1976)、保育社
星野卓二・正木智美、『岡山県カヤツリグサ科図譜』、(2003)、山陽新聞社
初島住彦『琉球植物誌（追加・訂正版）』,(1975),沖縄生物教育研究会

関連項目

* 要注意外来生物

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