シチトウ

シチトウ（Cyperus monophyllus Vahl）について

シチトウは、カヤツリグサ科カヤツリグサ属に分類される多年生草本植物です。湿地を好み、特に河口の汽水域に群生します。その特徴的な姿から、リュウキュウイ（琉球藺）、シチトウイ、シットウイ（七島藺）などの別名でも知られています。畳表の材料として、古くから人々の生活に密接に関わってきました。

特徴

シチトウは、根茎が太く地中を這い、そこから単独で花茎を伸ばします。花茎は高さ1～1.5mにも達しますが、太さは4mm程度と比較的細く、断面は鋭い三角形をしています。根元付近ではやや円形になります。根出葉は2～3枚と少なく、鞘が発達して30cmにもなりますが、葉身はほとんどありません。鞘は褐色から赤褐色を呈します。

花茎の先端には花序がつきますが、つかない茎も多く見られます。花序がない場合、先端は真横に切れたような形になり、そこから3枚程度の短い葉状の苞が上向きに生えます。花序がある場合は苞は開きます。花序は数本の小枝に分かれ、それぞれの先に3～10個の小穂がまとまってつきます。小穂は細長い棒状で、長さ1～3cm、幅1～1.5mm、色は藁色をしています。小花は間隔を置いてつき、鱗片は長さ2～2.5mm、果実は鱗片より少し短く、線状長楕円形です。花柱は短く3裂しています。

生育環境と分布

シチトウは湿地に生育し、根元が水に浸かる環境を好みます。特に河口の汽水域に多く見られ、ヨシやシオクグなどと共に大きな群落を形成します。沖縄などではマングローブ周辺の流れのそばでも生育します。

日本国内では本州南部から琉球列島にかけて分布していますが、本土のものは栽培逸出と考えられています。沖縄のものも同様の可能性が指摘されています。国外では、中国南部、インドシナ、台湾などに分布しています。

和名の「シチトウ」は「七島」を意味しており、トカラ列島が原産地であるという説があります。畳としての利用も、この地が発祥であるという説があります。

利用

畳表

シチトウは、主に畳表の材料として利用されます。シチトウを使った畳表は、琉球表、あるいは琉球畳と呼ばれます。琉球畳の名称は、本来シチトウを使ったもののみに用いられます。歴史的には、シチトウ以外の材料を使ったものは琉球畳とは呼ばれませんでした。縁なしの畳は縁なし畳や坊主畳と呼ばれます。

現代では、琉球畳は半畳の正方形で縁なしの畳を指すことが多く、その場合にはイグサなどの他の材料が使われていることもあります。

柔道畳

シチトウは非常に丈夫であるため、柔道用の畳にも使われていました。2002年から2008年にかけて、「非営利団体 柔道畳復元プロジェクト」が講道館の資料に基づいて創設時の柔道畳の復元を行いました。その研究により、講道館の畳には、嘉納治五郎が研究を重ねていたシチトウを使った畳が用いられていたことが判明しました。

嘉納と講道館専属の畳職人である内野によって、大分県産のシチトウと経糸に長野県大町市美麻産のおお麻を使った畳へと進化しました。

東京オリンピックの柔道会場である日本武道館にも、シチトウを使った柔道畳が敷かれていました。しかし、その後のオリンピックでは、ビニール製の柔道畳が使用されています。

その他

シチトウは筵としても利用されます。また、乾燥させた茎を円形に巻いて輪を作り、スイカの台として利用することもあります。

シチトウの畳表は、1農家で1日に2畳程度しか生産できないため、価格は比較的高価です。シチトウの茎を2つまたは3つに裂き、乾燥させたものとイチビ糸で織られ、やや粗い感触があります。大分県産では麻糸のイチビが使われていましたが、近年ではケナフなどの糸が使用されています。また、中国やベトナムからの輸入もあります。

大分県国東市で生産される畳表は、2016年12月7日に「くにさき七島藺表」として地理的表示に登録されています。

栽培

工芸作物として、現在、日本国内では大分県国東地方で栽培されており、生産量は30t（2005年）です。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』(1982年、平凡社)
星野卓二他『岡山県カヤツリグサ科植物図譜』(2003年、山陽新聞社)
講道館『柔道』
日本武道館『武道』500号

関連項目

くにさき七島藺表
木下俊治 - 豊後日出藩第2代藩主。薩摩藩から「七島蘭」を導入。

外部リンク

くにさき七島藺(七島イ)振興会
非営利団体 柔道畳復元プロジェクト

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