メルポメネー

メルポメネー : 古希の文芸の女神

メルポメネー（Μελπομένη）は、古代ギリシア神話に登場する9人のムーサのうちの1柱で、文芸、特に悲劇や挽歌を司る女神として知られています。彼女の名前は「女性歌手」を意味し、長母音を省略してメルポメネとも表記されることがあります。メルポメネーは、最高神ゼウスと記憶の女神ムネーモシュネーの娘であり、姉妹たちにはカリオペー、クレイオー、エウテルペー、エラトー、テルプシコレー、ウーラニアー、タレイア、ポリュムニアーがいます。

彼女の姿は、しばしば翼のある女性として描かれますが、持ち物には仮面や葡萄の冠、靴などが含まれており、特に悲劇的な雰囲気を醸し出すために仮面は多くの作品で重要な象徴となっています。メルポメネーはリラの神としても知られ、古代の音楽や詩において重要な役割を果たしていました。なお、ムーサたちがそれぞれの役割に細分化されたのは、ローマ時代の後期であり、古代ギリシア時代には一つの概念として存在していたとされています。

メルポメネーは、河神アケローオスとの関係があり、彼との間にセイレーンたちを生んだとの伝説がありますが、これに関してはカリオペーやテルプシコラーとの説も存在します。さらに、音楽家タミュリスもメルポメネーの子とされ、その才能が神からの贈り物であることが語られています。これらの伝説は、彼女の影響力と存在の幅広さを表しています。

ギリシア神話におけるメルポメネーは、悲劇や挽歌の象徴としての重要性を持つだけでなく、後の文化や芸術に多大な影響を与えました。彼女に捧げられた詩や劇においては、深い感情や人生の悲哀が描かれ、これらは今でも多くの人々に愛されています。

メルポメネーの存在は、文学や音楽の発展に貢献し、彼女が創造した作品は、今日でも演劇や詩の中で生き続けています。彼女の名は多くのアーティストにインスピレーションを与え、悲劇の女神としての彼女の役割は、文芸の世界において特別な位置を占めています。

参考文献

• - ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫（1984年）
• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
• - 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）
• - ワルター・F・オットー『ミューズ 舞踏と神話』西澤龍生訳、論創社（1998年）

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