メンディップ (駆逐艦)

メンディップ (HMS Mendip, L60)の歴史

メンディップはイギリス海軍のハント級駆逐艦であり、特にその経歴は興味深いものです。1939年にイングランド北部のウォルセンドのスワン・ハンター造船所で建造が始まり、1940年10月12日に竣工しました。彼女はデビュー早々、スカパ・フローを拠点とする英国本国艦隊に配属されましたが、搭載した爆雷の事故により損傷を受けてしまいます。修理を終えた後、1941年3月30日に第21駆逐艦隊に配属され、その後約3年にわたって北海や英仏海峡で輸送船団の護衛や哨戒任務に従事しました。

1942年9月には第21駆逐艦隊の指揮艦となり、艦長が直接指揮を執る形となります。1943年6月には地中海艦隊へ転属し、作戦に参加する機会も得ます。特に、ハスキー作戦やアヴァランチ作戦といった連合軍の重要な作戦に関与し、1944年にはノルマンディー上陸作戦の支援を行いました。終戦まで、メンディップは第21駆逐艦隊に留まり、輸送船団の護衛などに尽力しました。1946年には予備役扱いとなり、最終的にはイギリス海軍から退役します。

第二次世界大戦後のメンディップ

1948年5月、メンディップは国共内戦中の中華民国海軍に貸し出され、現地で「霊甫（Lin Fu）」という新たな名前を与えられました。この名は戦死した軍人、張霊甫に由来しています。霊甫と姉妹艦のオーロラはポーツマスを出港し、香港に到達。また、その後上海や南京に続々と向かいます。しかし、国共内戦の影響で国民党政府が劣勢に立たされ、艦隊の中には共産党に寝返る動きが出始めました。イギリス政府はその状況に危機感を抱き、1949年には霊甫を接収し、返却しました。

次いで、1949年11月にはメンディップはエジプト海軍に売却され、「モハメド・アリ＝エル＝ケビル」と名付けられます。その後、1951年に「イブラヒム＝エル＝アワル」と改名されました。1956年のスエズ危機では、ハイファ近郊での海上封鎖のために派遣され、イスラエル市に砲撃を行いますが、イスラエル軍の攻撃により最終的には味方に拿捕される結果となりました。

その後、イスラエル海軍で「ハイファ（INS Haifa）」という名前で運用され、1960年代の後半まで活躍しました。1968年には標的艦として使用され、対艦ミサイルによって沈没したとの情報や、1972年まで訓練艦として使用された後に解体されたとの情報も存在します。最後に、ハイファで使用されていた装備の一部は、現在ハイファ市のイスラエル海軍博物館に展示されています。

以上のように、メンディップは複数の国で様々な運用を経て、艦船としての歴史を刻んできました。その過程は、戦争の悲劇や国際情勢の変化を反映していると言えるでしょう。

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