メーキステウス

出自とその系譜

メーキステウス（古希: Μηκιστεύς, Mēkisteús）は、古代ギリシア神話に登場する人物です。彼は、アルゴスの王家の一員であるタラオスとその妻リューシマケーの間に生まれた息子です。メーキステウスは後に英雄エウリュアロスの父となりました。兄弟には、テーバイ攻めの指導者の一人として知られるアルゴス王アドラストスがいます。このように、メーキステウスはアルゴス王家と深く関わる存在であり、彼の系譜は後の世代の英雄へと繋がっています。

テーバイ攻めの七将における位置づけ

メーキステウスに関する神話で最も注目すべき点の一つは、カドモスの都テーバイに対する有名な遠征、いわゆる「テーバイ攻めの七将」への彼の関与です。この遠征は、テーバイ王オイディプスの息子たち、エテオクレスとポリュネイケスの間の王位継承争いに端を発し、アルゴス王アドラストスがポリュネイケスを支援するために組織したものです。

メーキステウスは、彼の兄弟であるアドラストスと共にこの遠征に参加したとされることがよくあります。しかし、彼が「七将」と呼ばれる主要な指導者の一人であったかについては、古代の伝承の間で異説が見られます。例えば、三大悲劇詩人の一人であるアイスキュロスの悲劇『テーバイ攻めの七将』では、七将として挙げられる特定の英雄たちのリストの中に、メーキステウスの名は含まれていません。これは、彼が遠征の主要な指導者ではなかったか、あるいはアイスキュロスの時代に流布していた特定の伝承においては七将に数えられていなかったことを示唆しています。

一方で、後代の歴史家アポロドーロスが著した『ビブリオテーケー（ギリシア神話）』では、テーバイ攻めに参加した七将の構成員について複数の説を紹介しており、その中には有名な英雄テューデウスに代わってメーキステウスを七将の一人として数える伝承も含まれています。また、歴史家ヘロドトスもテーバイを攻撃したアルゴスの戦士の一人としてメーキステウスの名を記していますが、彼が七将の一人であったかどうかまでは明確に述べていません。

これらの異説は、メーキステウスがテーバイ攻めの遠征自体には何らかの形で関与していた可能性が高いことを示しつつも、彼が中心的な指導者である「七将」の一員であったかについては、特定の時代や地域、あるいは情報源によって見解が分かれていたことを物語っています。神話伝承の多様性を示す好例と言えるでしょう。

オイディプスの葬礼競技での活躍

メーキステウスに関するもう一つの重要な記述は、ホメロスの有名な叙事詩『イーリアス』に見られます。『イーリアス』は主にトロイア戦争の出来事を描いていますが、その中で過去の出来事として、メーキステウスがテーバイで行われたオイディプスの葬礼競技に参加したというエピソードが語られています。オイディプスの死後、彼を追悼するために開催されたこの競技会は、当時の英雄たちが武勇を競い合う場でした。

『イーリアス』の記述によれば、メーキステウスはこの葬礼競技において、特に拳闘競技に参加しました。そして、彼はその競技で圧倒的な強さを発揮し、対戦したすべての参加者に対して勝利を収めたと伝えられています。この逸話は、テーバイ攻めの七将としての位置づけが曖昧であるメーキステウスにとって、彼の個人的な武勇や身体能力がいかに優れていたかを示す明確な証拠として機能しています。拳闘での全勝という事実は、彼が単なる王族の一員ではなく、屈強な戦士としても名声を得るに値する人物であったことを示唆しています。

結論

メーキステウスは、アルゴスの王家に連なるギリシア神話の人物であり、英雄エウリュアロスの父です。彼の神話における最も主要な活動は、テーバイ攻めの遠征への参加ですが、彼がその中心的な指導者である「七将」の一人であったかについては、古代の伝承源によって異なる見解が示されています。アイスキュロスは彼を七将に含めず、アポロドーロスは異説として七将の一人に数える伝承を紹介しています。しかし、ホメロスの『イーリアス』におけるオイディプスの葬礼競技での拳闘全勝というエピソードは、彼の個人的な武勇が非常に優れていたことをはっきりと伝えています。メーキステウスは、主要な戦役への関与と個人的な力の描写を通して、ギリシア神話の世界にその名を留めている人物と言えるでしょう。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』
ホメロス『イーリアス』
アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』
ヘロドトス『歴史』

※上記参考文献は、メーキステウスに関する伝承が記されている主要な古代文献の一部です。

もう一度検索