モスクヴィッチ

モスクヴィッチ (Moskvitch) について

モスクヴィッチは、旧ソ連およびロシアにおける自動車メーカーで、1930年から2002年までの間に多くのファミリーカーを生産してきました。名前の由来は「モスクワっ子」であり、モスクワに本拠を置いていました。

会社の歴史

モスクヴィッチのルーツは、1930年に設立されたモスクワ自動車工場に遡ります。この工場は年間24,000台の生産能力を持っていましたが、第二次世界大戦中にウラル地方のミアスへ設備を疎開する必要がありました。戦後、ドイツから接収したオペル・カデットの生産設備が設置され、1947年から小型車の生産が開始されました。

この新しい工場は「MZMA」（モスクワ小型自動車工場）と命名され、初めて生産された車はオペル・カデットをもとにした「400」でした。当初はオペルのスタイルに似た車両を生産していましたが、次第にソ連のエンジニアたちが独自に開発した車両が登場しました。1969年には、工場名も「AZLK」へと改称されました。

モスクヴィッチの人気

モスクヴィッチはその丈夫さと手頃な価格から、広く使用され、特に西欧や東欧諸国向けにも輸出されました。また、1966年から1990年までブルガリアでノックダウン生産も行われ、1960年代には少数が日本にも輸入販売されるなど、その名声は国を超えて広がりました。しかし、1970年代からフィアット・124を基にした新しいモデル「ジグリ」の生産が始まると、次第に人気が下降していきました。

1986年には新型車「アレコ-2140/2141」が発表されました。これは前輪駆動の5ドアハッチバックで、外観はタルボ・1510に似ていましたが、エンジン配置やシャシー設計はアウディ・80/100の影響を受けたと考えられています。しかし、1990年代に入ると西側諸国から最新の車両が流入し始め、モスクヴィッチは厳しい競争に直面することとなりました。1990年代前半には民営化が進み、「OAOモスクヴィッチ」と改称されましたが、経営は行き詰まり、2002年には破産し工場が閉鎖されてしまいました。

その後

2005年には、ルノーとロシアのアフトフラモスが共同で設立された企業が工場の一部を取得し、ルノー・ロガンのノックダウン生産が開始されました。しかし、2006年にはOAOモスクヴィッチが再び破産し、2007年には清算手続きが完了することになりました。

2022年には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ルノーがロシアから撤退する意向を表明し、モスクワ市長のセルゲイ・ソビャーニンがルノーの工場を利用してモスクヴィッチブランドを復活させる計画を発表しました。

主な車種

• - 初代モデル (1946-1955年): オペル・カデットをもとにした400/401セダン、422ワゴン、420コンバーチブルなどが生産。
• - 二代目 (1956-1963年): 自社開発を進め、日本のトヨペット・スーパーに似たデザインが特徴。新たに開発されたSOHCエンジンを搭載した「403」や「407」といったモデルが登場。
• - 三代目 (1964-1985年): 角ばったデザインに変更され、408や412などが生産された。
• - 四代目 (1986-2002年): 「アレコ-2140/2141」として前輪駆動のハッチバックが登場し、近代化が図られました。1980年代には西側諸国への輸出も行われました。

このように、モスクヴィッチは多くの年にわたって自動車産業に影響を与えてきたブランドの一つです。

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