モスコビアン

モスコビアンについて

モスコビアン（英: Moscovian）は、地質学における時代区分の一つであり、国際層序委員会によって認定されています。この時代は約3億1520万年前から3億700万年前にかけての期間を指し、石炭紀ペンシルバニアン亜紀の中期に当たります。モスコビアンの前の時代は後期石炭紀前期のバシキーリアンであり、その後に続くのは後期石炭紀後期のカシモビアンです。また、モスコビアンの模式地はロシアのモスクワ盆地に位置しています。

層序学的定義

モスコビアンは1902年にド・ラバランによって名付けられました。モスクワ盆地の地層には、厚さ約180メートルの泥灰土質の白色石灰岩が存在し、特徴的な化石としてSpirifer mosquensisやFusulina cylindricaが見つかります。さらに、別のフズリナとしてStaffella属も広く分布しています。また、サマラベンド地域では、上部を含めると約300メートルに達し、基底にはStafella antiquaが豊富に見られ、大型フズリナはあまり発見されていません。

モスコビアンの基底には、コノドントのDeclinognathodus donetzianusやIdiognathoides postsulcatusの初出現が関連していますが、フズリナのニッチにしても地域によって異なるため、世界的な標準化には使用できない点に留意が必要です。2020年4月現在、モスコビアンの国際標準模式層断面（GSSP）は確定しておらず、2008年に提案されたDiplognathodus ellesmerensisの初出現がGSSP候補とされているものの、希少な化石や進化の理解不足が課題とされています。

環境変化

モスコビアンが存在した時期、特に日本の山口県に広がる秋吉石灰岩では、温暖な海で繁栄した普通海綿綱のchaetetidsが後期モスコビアンで急激に減少しました。この現象は、当時の地球が寒冷化に向かっていた影響を反映していると考えられています。パンサラッサ海に位置していた秋吉海山の生物群集は、比較的遅れて寒冷化の影響を受けたと推測されています。

また、バシキーリアンからモスコビアンの期間には、パンサラッサ海でスーパープルームを起因とする活発な火山活動が見られ、これが北部秩父帯の緑色岩形成と関連しています。この火山活動が起こした湧昇流は、秋吉帯周辺の浅瀬に豊富な栄養塩を供給し、後の生態系を支えたとされています。実際、秋吉帯の石灰岩には高いP2O5含有率が認められ、これは生態系の変遷を示す重要な指標となっています。

日本におけるモスコビアンの証拠

日本国内では、兵庫県中部の篠山地域にある丹波帯畑山セクションで、厚さ2.6メートルのチャートが露出し、モスコビアンを示すコノドントMesogondlella clarkiが見つかりました。さらには、山口県美祢市大嶺町に存在する頁岩からはフズリナのChatetes属や四射サンゴが発見され、モスコビアン階と判断されています。

このように、モスコビアンは地球の歴史の中で重要な役割を果たしていることが明らかになっています。さらに、この時代に生息した生物の化石が地球環境の変化とどう関連しているのかを探ることは、地質学的にも意義深いテーマです。

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