モトーリ・モデルニ

モトーリ・モデルニ：F1に挑んだイタリアの情熱

モトーリ・モデルニ社は、1984年、経験豊富なエンジニア、カルロ・キティ氏によってイタリアで設立されました。フェラーリやアルファロメオでのキャリアを持つキティ氏は、アルファロメオのモータースポーツ部門からの独立を機に、自らのレーシングエンジンの専門会社を設立したのです。モトーリ・モデルニの設立は、F1という世界最高峰の舞台への挑戦の始まりでもありました。

F1への挑戦：V6ターボとF12エンジンの開発

設立からわずか5ヶ月という驚異的なスピードで、モトーリ・モデルニは初のF1エンジンを完成させました。それは、当時F1への新規参戦を目指していたミナルディチームへの供給という形で、その姿を現しました。90度バンク角のV型6気筒ターボエンジンは、1985年のサンマリノGPでF1デビュー。しかし、信頼性の課題や予算不足により、ミナルディチームとの長期的な成功には至りませんでした。

1989年、F1レギュレーションの変更（自然吸気3.5Lエンジンへの統一）を受け、モトーリ・モデルニは新たな挑戦を始めます。それが、水平対向12気筒（F12）エンジンの開発です。このプロジェクトでは、日本の自動車メーカー、富士重工業（スバル）との技術提携が実現しました。当初はロードカー用エンジンのチューニングという話から始まったこの協業は、やがてF1参戦という壮大な目標へと発展していったのです。

スバルとの共同開発により生まれたF12エンジンは、コローニチームに供給されることになります。しかし、このエンジンは、そのサイズと重量から「ダブルベッド」と揶揄されるほど大きく、当時のF1エンジンの水準には達していませんでした。1990年シーズン、コローニはモトーリ・モデルニのF12エンジンを搭載したものの、予備予選落ちが続くなど、厳しい結果に終わりました。そして、スバルの判断により、F1プロジェクトは8戦目を最後に終了することとなりました。

WSPC参戦とその他の活動

F1での活動と並行して、モトーリ・モデルニのエンジンはスポーツカー世界選手権（WSPC）でも使用されました。V6ターボエンジンはグループCマシンに搭載され、F12エンジンもアルバ・AR20/1に搭載され参戦しました。しかし、WSPCでの成績も芳しくなく、F1同様、開発の難しさと、当時の競争の激しさを改めて示す結果となりました。

F1計画終了後も、モトーリ・モデルニはV12エンジンの開発を継続し、スポーツカーへの搭載を目指していました。ロードカー「ジオット・キャスピタ」にもF12エンジンを搭載した試作車が製作され、東京モーターショーにも出展されましたが、量産化には至りませんでした。

モトーリ・モデルニの遺産

モトーリ・モデルニのF1挑戦は短命に終わりましたが、その挑戦は、技術的な革新と、国際的な協業という点で、大きな意義を持っていました。限られた資源と時間の中で、革新的なエンジンを開発し、F1という舞台に挑んだ彼らの情熱は、モータースポーツ史に一つの足跡を残したと言えるでしょう。また、スバルとの提携は、日本とイタリアの技術交流という点でも貴重な経験となりました。モトーリ・モデルニの挑戦は、成功と失敗を経験しながらも、常に技術革新を追求する姿勢を示した、まさに「挑戦の歴史」と言えるでしょう。現在もその技術は、様々な形で評価され、語り継がれています。

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