モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ

モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ

モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ・ホンサーリ（Mohammad Javad Zarif Khonsari、ペルシア語: محمدجواد ظریف خونساری、1960年1月7日 - ）は、イランの外交官、政治家です。現在は戦略問題担当副大統領を務めており、過去には外相や国連大使などの要職を歴任しました。外交論や国際機関論の研究者としても知られ、テヘラン大学で客員教授を務めています。

生い立ちと教育

ザリーフは、テヘランの裕福な商家に生まれました。両親は教育熱心で、幼い頃から革命思想に触れる機会を与えました。私立の宗教学校であるアラヴィー校で学んだ後、17歳でアメリカに留学。カリフォルニア州のドルー・スクールを経て、サンフランシスコ州立大学で国際関係論の学士号と修士号を取得しました。さらに、デンバー大学ジョゼフ・コーベル国際研究大学院で学び、国際関係論で2つ目の修士号、国際法・政策論で博士号を取得しています。

博士論文の題目は「国際法および政策における自衛」であり、彼の専門性と関心を示すものです。指導教官のロム・ロウは、ザリーフを「私がこれまで教えてきた生徒のなかでも、最高の部類に入る」と高く評価しています。

国連大使としての活躍

イラン革命後の1982年、ザリーフはイランの国際連合代表部職員に任命されました。英語能力とアメリカとの関係が重視された人事でした。外交官としてのキャリアをスタートさせたザリーフは、レバノンで拘束されたアメリカ人人質の解放交渉に携わるなど、重要な役割を担いました。

2000年には、世界人種主義会議のアジア準備会合の議長や国連軍縮委員会の委員長を務め、国際的な舞台で存在感を示しました。また、テヘラン大学で国際法の教授に就任し、後進の育成にも貢献しました。2002年から2007年までイランの国連大使を務め、アメリカとの関係改善を目指す「大きな取り引き」と呼ばれる計画に深く関与しました。

外相としての手腕

2013年、ハサン・ロウハーニー大統領によって外相に任命されました。外相として、イランの核開発問題に関する6か国協議（P5プラス1）を主導し、2015年に包括的共同作業計画（JCPOA）を採択。これにより、イランに対する経済制裁が解除されました。しかし、2018年にアメリカが核合意から離脱したことで、イラン経済は再び苦境に立たされました。

ザリーフは、核合意の維持に向けて奔走しましたが、アメリカの経済制裁の影響は大きく、国内からは辞任を求める声も上がりました。2019年には一時辞意を表明しましたが、ロウハーニー大統領に慰留され、外相を続投しました。

副大統領として

2024年、新任のペゼシュキヤーン大統領から戦略問題担当の副大統領に任命されました。しかし、自身の子がアメリカとの二重国籍であることを理由に辞意を表明。その後、大統領との協議を経て辞表を撤回し、副大統領職に復帰しました。

人物像

ザリーフは既婚で、アメリカ生まれの1男1女がいます。ペルシャ語と英語に堪能であり、国際的な舞台で円滑なコミュニケーションを図ることができます。イラン国内では高い人気と評判を得ており、世論調査でも高い支持率を誇っています。

また、CNNのインタビューで流暢な英語を駆使してドナルド・トランプ大統領を批判するなど、メディアへの露出は少ないながらも、その発言は注目を集めています。

栄典

タイム100（『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」） 2014年および2015年
チャタム・ハウス賞（王立国際問題研究所） 2016年、ジョン・ケリーと共同受賞
功労経営勲章1等（イラン、2016年2月8日）
アンデスのコンドル勲章大十字（ボリビア、2016年8月26日）

モハンマド・ジャヴァード・ザリーフは、イランの外交を担ってきた重要な人物であり、その動向は今後も注目されるでしょう。

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