モバイルブラウザ

モバイルブラウザ、またはマイクロブラウザとは、携帯電話やPDAといったモバイルデバイス向けに開発されたウェブブラウザのことです。これらのブラウザは、小型の画面でWebコンテンツを効率的に表示できるよう最適化されているのが特徴です。

技術基盤

モバイルブラウザは、携帯電話網や無線LANを通じて、TCP/IPプロトコル上のHTTPを使用します。表示可能なページは、HTML、XHTML Mobile Profile（WAP 2.0）、WML（HDMLベースのWAP 1.3規格）など、さまざまなマークアップ言語で記述されています。特に日本では、NTTドコモが定義したCompact HTMLや、HTMLを閲覧できるiモードが普及しました。

WAP 2.0では、W3Cの標準規格であるXHTMLとCSSを携帯機器向けに調整したXHTML Mobile ProfileとWAP CSSが定義されています。

歴史

モバイルブラウザ技術は、初期の携帯機器におけるデータサービスとして発展しました。WAP、NTTドコモのiモード、そしてオープンウェーブのHDMLなどがその代表例です。

1997年、イギリスのSTNC社は、HitchHikerというユーザーインターフェース全体を提供するマイクロブラウザを開発しました。このブラウザを実装したWebwalkerというプラットフォームは、わずか1MIPSの処理能力しか持っていませんでした。1999年、STNC社はマイクロソフトに買収され、HitchHikerはMicrosoft Mobile Explorer 2.0として生まれ変わりました。これは、Microsoft Mobile Explorer 1.0とは直接的な関係はありません。

HitchHikerは、HTML、WAP、ECMAScript、WMLScriptなどの描画に加え、POP3やIMAPの電子メール機能も備えた、統合レンダリングモデルを持つ最初のマイクロブラウザでした。また、当時は珍しく、HTMLとWAPが混在するページの表示も可能でした。

1998年には、日本の奥一穂氏がPalmOS向けのフリーブラウザPalmscapeを開発しました。

2001年には、iモード互換機能を追加したMobile Explorer 3.0がリリースされました。これは、OTAデータベース同期、プッシュ型電子メール、プッシュ型情報クライアント、PIM機能などを搭載していましたが、ソニー・エリクソンがCMD-Z700への搭載を試みたものの、最終的にはキャンセルされました。Mobile Explorerの開発は2002年に終了しました。

オペラソフトウェアは、Small Screen Rendering（SSR）とMedium Screen Rendering（MSR）といった携帯機器向けの技術を早期から開発していました。Opera Browserは、小型画面に通常のWebページを表示できるよう最適化されており、Ajaxを最初にサポートしたモバイルブラウザであり、Acid2テストに初めて合格したモバイルブラウザとしても知られています。

2000年代中盤からは、HTML、CSS 2.1、JavaScript、Ajaxに対応し、Adobe Flash Liteのようなプラグインが利用可能となるなど、通常のウェブブラウザと同等の機能をほぼ全て備えたフルブラウザが登場し、従来のモバイルブラウザは次第にその役割を終えました。フルブラウザは、WMLやCompact HTMLといったモバイル固有の技術にも対応しています。

関連項目

フルブラウザ
ウェブブラウザ
ウェブサイト
iモード
ドットi
情報機器
ユーザーエージェント
モバイルサイト

外部リンク

Compact HTML for Small Information Appliances — W3C NOTE 09-Feb-1998
Global Authoring Practices for the Mobile Web — Guidelines for Mobile Development.
W3C Mobile Web Initiative
dev.mobi - 携帯機器向け開発に関するサイト

モバイルブラウザは、技術的な進歩とともに、私たちのデジタルライフに欠かせないツールへと進化しました。初期の制約から解放され、フルブラウザへと移行していく過程は、技術革新の象徴とも言えるでしょう。

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