モフタル・ルビス

モフタル・ルビス

モフタル・ルビス（Mochtar Lubis、1922年3月7日 - 2004年7月2日）は、インドネシアの著名なジャーナリストにして小説家であり、新聞『インドネシア・ラヤ』や文芸誌『ホリソン』の共同創設者として知られています。彼はインドネシアの文学と報道の自由の重要性を体現した人物であり、特にスハルト政権下ではその批判的立場から度々投獄される辛酸をなめました。

出生と若年期

ルビスはスマトラ島のケリンチ県スンガイ・ぺヌフにて、高位の公務員の家庭に生まれました。彼は12人兄弟の6番目の子供であり、幼少から児童文学に興味を持ち、『Sinar Deli』という新聞に作品を発表しました。また、若いころはスマトラのジャングルを探検し、この経験が後の作品『虎！虎！』の創作につながることになります。

高校卒業後、ルビスはニアス島で教員として働きましたが、1年後にはバタヴィアに移り、銀行での仕事を始めました。しかし、1942年に日本がインドネシアを占領すると、彼は日本のために同盟通信社の記者として働きます。

ジャーナリストとしての活動

戦後、ルビスはインドネシア独立宣言の後、ニュース通信社アンタラの記者として活動を再開します。彼は1947年のアジア関係会議を取材し、この時期に『果てしなき道』という小説も執筆しました。1949年には『インドネシア・ラヤ』の共同創設者となり、編集長として同紙を通じて数々の批判的な記事を発表しました。

その結果、彼は幾度も投獄され、特に1957年から1966年の間は東ジャワ州マディウンに収監されていたことが知られています。彼の報道はしばしば当局の逆鱗に触れ、政府の圧力が強まる中でも自由な報道を貫きました。

1955年、ルビスはアフリカ系アメリカ人作家リチャード・ライトを招いた際、インドネシア・ラヤで彼に関する特集を組みました。

困難な時代

1975年、ルビスはマラリ事件に関与したとして逮捕され、発行禁止処分を受けた『インドネシア・ラヤ』も、この影響を受けました。裁判を受けることなく2か月間、ヌサ・カンバンガン島の監獄に収監され、世の中の不公平に対する疑問を述べる立場を強めました。彼は同時に「いかなる裁判も受けずに長期間投獄されている人々」の問題に対する関心を高める活動も行っています。

彼が設立した数多くの雑誌や団体の中には、1970年に設立されたオボル・インドネシア財団や、雑誌『ホリソン』、緑化財団などがあり、彼の影響力は広範囲に及びました。

名声と晩年

ルビスは、報道の自由に対する圧力や人権問題に対して公然と声を上げ、2000年には国際的な報道の自由の象徴として「世界報道の自由のヒーロー」に選ばれました。彼はまた、1958年にはマグサイサイ賞を受賞し、その業績が評価されています。

彼は晩年、アルツハイマー病を患いながらも影響力を持ち続け、2004年に82歳でこの世を去ります。葬儀には多くの弔問客が集まり、ジャーナリストや作家としての彼の功績を称えました。彼は妻シティ・ハリマフと3人の子ども、そして8人の孫を残し、家族との絆も大切にしていました。

彼の生涯と業績は、インドネシアの報道と文学において重要な位置を占めており、今もなおその影響は語り継がれています。

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