深海掘削計画

深海掘削計画（DSDP）とは

深海掘削計画（Deep Sea Drilling Project, DSDP）は、1968年から1983年まで行われた、海洋底の掘削と研究を目的とした国際的な科学プロジェクトです。このプロジェクトは、地球物理学、古生物学、そして海洋の古環境学といった多岐にわたる分野に、重要な貢献をしました。

プロジェクトの背景と目的

DSDPは、それ以前のモホール計画の失敗を踏まえ、より現実的なアプローチとして、深海底の堆積物や地殻上部を研究することを目指しました。このプロジェクトでは、深海掘削船「グローマー・チャレンジャー」が使用され、海底の岩石を採取し、その年代を測定することによって、海洋底拡大説を直接的に証明することを主要な目的としていました。

海洋底拡大説の証明

プロジェクトの初期段階において、南アメリカ大陸側のリオデジャネイロ沖の大西洋でボーリングが行われました。この掘削によって得られた海底の地磁気のデータから、海底の形成年代が分析され、中央海嶺から遠ざかるにつれて海底の年齢が古くなるという事実が確認されました。この発見は、海洋底拡大説を直接的に裏付ける強力な証拠となり、地球科学における重要な進歩となりました。

プロジェクトの国際化と発展

当初、DSDPはアメリカ合衆国の4つの海洋研究所が共同で実施する国内プロジェクトでしたが、1976年以降、アメリカ、日本、イギリス、フランス、西ドイツ、ソビエト連邦といった国際的な協力体制の下で、国際深海掘削計画（International Phase of Ocean Drilling, IPOD）として拡大しました。この国際的な協力により、世界各地の海洋での掘削調査が進められ、海底の年代、堆積構造、そして地殻岩石に関する貴重なデータが集積されました。DSDPは1983年の第96節航海をもって終了し、その後、国際深海掘削計画へと発展しました。

その他のプロジェクトとの関連性

DSDPは、その後の海洋掘削プロジェクトに大きな影響を与えました。関連するプロジェクトとしては、以下のものがあります。

モホール計画（1958年 - 1966年）: DSDPの前身とも言えるプロジェクトで、地殻を貫通してマントルに到達することを目標としていましたが、技術的な困難から失敗に終わりました。DSDPは、モホール計画の反省を踏まえ、より現実的な目標設定と技術開発によって成功を収めました。
国際深海掘削計画（Ocean Drilling Program, ODP）（1985年 - 2002年）: DSDPの後継プロジェクトで、より高度な技術と国際協力体制のもとで海洋底の掘削研究が進められました。ODPでは、さらに深部の地殻やマントルの研究も行われ、地球科学の知見が大きく拡大しました。
統合国際深海掘削計画（Integrated Ocean Drilling Program, IODP）: ODPの後継プロジェクトで、2003年から現在も継続しています。IODPでは、地球のダイナミクス、気候変動、生命の起源など、より複雑な研究テーマに取り組んでいます。
深海底試料採取国際研究所連合（Joint Oceanographic Institutions for Deep Earth Sampling, JOIDES）: 海洋掘削プログラムを運営する国際的な組織で、DSDP、ODP、IODPなど、各プロジェクトの運営に重要な役割を果たしています。
グローマー・チャレンジャー: DSDPで使用された深海掘削船で、この船の活躍によって多くの発見がなされました。

まとめ

深海掘削計画（DSDP）は、海洋底の掘削研究を通じて、地球科学の発展に多大な貢献をしました。このプロジェクトによって、海洋底拡大説が証明され、地球の歴史や構造に関する重要な知見が得られました。また、その後の海洋掘削プロジェクトの基礎を築き、地球科学の進歩に不可欠な役割を果たしました。DSDPの成果は、現在も多くの研究者によって参照され、地球科学のさらなる発展に寄与しています。

参考文献

酒井 治孝『地球学入門 惑星地球と大気・海洋のシステム』東海大学出版会、2003年。ISBN 4-486-01615-7。

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