モルドヴィン人

モルドヴィン人：ヴォルガ・フィン系の歴史と文化

モルドヴィン人（Мордвин, Mordvin）は、ロシア連邦、特にモルドヴィア共和国に多く居住するフィン・ウゴル系[[民族]]です。日本では「モルドヴァ人」という呼称も用いられますが、これはモルドヴィア共和国に住むルーマニア系民族を指す場合もあるため、注意が必要です。

民族的背景と構成

モルドヴィン人は、コミ人、ウドムルト人、マリ人と近縁関係にあり、コーカソイドに属する一方で、モンゴロイドの遺伝子であるハプログループNを高い頻度（ある調査では19.3%）で保有しています。この事実は、彼らの歴史における多様な民族交流を示唆しています。

モルドヴィン人は大きく分けてエルジャ人とモクシャ人の2つの集団から構成されます。両者は、フィン・ウゴル語派に属するモルドヴィン諸語（エルジャ語とモクシャ語）を話し、言語面では方言程度の差異しかありません。しかしながら、近年はロシア語化が進み、モルドヴィン諸語話者の人口は約90万人と推定され、全人口の約120万人から考えると、相当数のモルドヴィン人がロシア語のみを話すようになっています。

歴史

モルドヴィン人の歴史は古く、6世紀の歴史書には東ゴート人に征服された民族として記録されています。その後も、ルーシのスラヴ人との紛争や、モンゴル帝国による征服など、幾多の試練を経験してきました。ロシア帝国の支配下では正教が普及しましたが、モルドヴィン人は独自の言語と文化を維持し続けました。ソビエト連邦時代にはモルドヴィア自治共和国が設立され、民族としてのアイデンティティを保つための基盤が築かれました。

文化と現状

モルドヴィン人の文化は、独自の言語、伝統衣装、音楽、そして信仰など多様な要素から構成されています。しかし、ロシア語の普及や都市化の影響により、伝統的な文化や生活様式は徐々に変化しつつあります。特に、若い世代ではロシア語が主要な言語となっており、モルドヴィン語の継承が課題となっています。

モルドヴィア共和国においても、モルドヴィン人は人口の約3分の1を占めるものの、共和国全体の人口に占める割合は減少傾向にあります。そのため、モルドヴィン語や文化の保存、そしてモルドヴィン人のアイデンティティの維持のための取り組みが、現在も重要な課題となっています。

結論

モルドヴィン人は、独自の言語と文化を持つ、歴史と伝統豊かな民族です。長い歴史の中で様々な民族や勢力と交流し、影響を受けながらも、独自のアイデンティティを維持し続けてきました。しかし、現代社会のグローバル化や都市化の波の中で、彼らの言語と文化の継承は大きな試練に直面しています。モルドヴィン人の文化と歴史を理解することは、多様な文化が共存する現代社会において、非常に重要な意味を持ちます。今後、彼らの言語と文化の保護、そしてモルドヴィン人のアイデンティティの維持に向けた更なる取り組みが期待されます。

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